学校・職場・家庭での熱中症対策は?(shutterstock.com)
2010年8月30日。早朝から灼熱の日ざしが眩しい。汗が吹き出る。大阪府東大阪市立中学1年のA子さん(当時13歳)はバドミントン部。午前11時10分に体育館に入り、入念にウォーミングアップした後、いつも通りの練習をこなした。かなり汗をかいた。
午後1時過ぎ、練習試合が始まるや否や、急に頭痛に襲われ、床に落ちたシャトルを拾えなくなる。意識が朦朧となり救急車で病院に運ばれたが、脳梗塞と診断されて緊急入院。左手指先に痙攣や麻痺などの後遺障害が残った。
A子さんの父・重富秀由さん(43)は、部活動中に熱中症にかかり、後遺障害を負ったのは、学校の予防対策の不備が原因として、5638万円の損害賠償請求訴訟を大阪地裁に起こした。
大阪地裁は学校に411万円の支払を命じる判決
6年の歳月が流れる――。今年の5月24日、大阪地裁(野田恵司裁判長)は、学校が熱中症を防ぐ義務を怠ったと判断し、学校に411万円の支払いを命じた。
判決によれば、当時の体育館内の温度は、日本体育協会の熱中症予防指針に「運動は原則禁止」と明記している36℃だった。校長は体育館内の温度や湿度を把握しておらず、温度計や湿度計の設置などの熱中症の予防策を講じていなかったと指摘。市教育委員会の清水紀浩学校教育部長は、判決内容を検討し、今後の対応を考えるとコメントした。
判決後の会見で、父・重富さんは「学校に熱中症の危険があることを知ってほしかった。学校の過失が認められて嬉しい。裁判官は体育館を訪れ、子どもたちが部活動で汗を流している状況をよく見てくれた。これからも熱中症を起こさないように、部活動に取り組んでほしい」と中学校に再発防止を強く訴えた。
現在、短大1年のA子さんは、今も左手の指先が不自由なので、ペットボトルのキャップを開けるのが困難という。
事故直後、東大阪市は市立中学校の体育館に温度計と湿度計を設置。2012年7月、市内すべての小中学校に温度計と湿度計のほか、熱中症の危険度を5段階で示す計器を配り万全を期している。