プラズマが医療を変える!?(shutterstock.com)
プラズマ(plasma)と聞いて、何をイメージするだろう? 太陽? 雷? オーロラ? 蛍光灯? ネオン? テレビ? 空気清浄機? エアコン? エンジン? 普段の生活でプラズマを意識する機会は少ないかもしれない。プラズマっていったい何だろう?
中学の理科をちょっとおさらいしよう――。
地球上の物質は、空気中の温度の変化によって状態が変わる。たとえば、温度が上がれば、固体(氷)は液体(水)に、液体(水)は気体(水蒸気)に変化する。さらに、気体(水蒸気)の温度が上がると、気体(水蒸気)の分子は原子になり、さらに温度が上がると、原子核のまわりを回っている電子が原子から離れイオンと電子に分かれる。この現象が電離だ。
電離によって生じた荷電粒子を含む高温の気体、それがプラズマである。プラズマは固体・液体・気体に続く「第4の物質状態」、宇宙の99%以上を占めるといわれる。
プラズマ技術は、全産業を支える基幹科学技術として、半導体や機能性薄膜の製造、エネルギーへの応用を皮切りに、農業、食品、医療、ヘルスケアまでさまざまな分野に応用されている。とくに低温大気圧プラズマ技術は、医療の未来を大きく変える可能性に満ちている。その未来図を覗いてみよう。
ダメージフリーだから触れる、触れるから安心
低温大気圧プラズマのメリットは、ヘリウムやアルゴンなど様々なガスを使って、高密度かつ室温から200℃程度の低温プラズマを簡単に作れるため、プラスチック、金属、半導体、繊維、紙はもちろん、生体にも放熱や放電による損傷を与えない安全性を備えている点だ。ダメージフリーだから触れる。触れるから安心。それが低温大気圧プラズマ技術の汎用性と普及につながっている。
東京工業大学未来産業技術研究所の沖野晃俊准教授によれば主な応用分野は次の通り――。医療、殺菌、細胞分析, 超微少量元素の分析、化粧品・皮脂の分析、食品・薬品の品質検査、農業をはじめ、脱臭、環境浄化、有害ガス・廃棄物処理、粉体処理、親水・撥水化処理、コーティング、酸化膜還元、接着前処理、排ガス、空港などのセキュリティ検査、犯罪捜査、テロ対策に至るまで実に守備範囲が広い。
とりわけ低温大気圧プラズマは、温度が低く生体への侵襲性が低いことから、止血、創傷治療、血管再生、臓器の癒着防止、細胞増殖の促進のほか、がん治療、遺伝子治療、再生医療まで、実に多岐に渡る卓越した有用性が世界各国で確認されている。