MENU

「パナマ文書」が暴いた貧富格差〜障害者の98%が年収200万円以下の貧困という重い現実

障害者の98.1%が年収200万円以下のワーキングプア!

 5月18日、国際労働機関(ILO)は、『2016年版世界の雇用・社会見通し』の中で、非正規雇用の増加などに伴って経済格差が拡大したため日本、米国、欧州連合(EU)などの先進国で貧困率が上昇していると発表した。

 ILOの報告によれば、先進国の可処分所得が中央値の6割に届かない相対的貧困の人の割合(2005年から20012年への推移)を比べると、日本は22.1%、米国は24.6%、EUは16.8%に上昇。

 先進国全体で働いても貧困状態にあるワーキングプアは労働者の約15%(およそ700万人)以上、新興国・途上国の絶対的貧困の人は20億人と推定される。

 障害者福祉施設の連絡組織である「きょうされん」(東京都新宿区)は、昨年7月から今年2月に作業所などの福祉サービスを利用する障害者1万2531人の生活状況を調査し、98.1%(1万2289人)が年収200万円以下のワーキングプアだったと発表している。

 年収は、障害基礎年金(1級なら月額8万1258円)、給料、工賃などを合計し、生活保護受給者は除外した。内訳は100万円以下が61.1%(7654人)、125万円以下が82.3%(1万309人)。家族に依存しなければ生きられない障害者の苦しい生活状況が窺える。

 また、慶応大学の山田篤裕教授らの研究グループは、厚生労働省の『国民生活基礎調査(2013年)』のデータを分析したところ、障害者の相対的貧困率は25%、20~39歳は28.8%、40~49歳は26.7%、50~64歳は27.5%と判明。

 障害のない人に比べると、ほぼ2倍の高率だ。障害者を含む全人口の貧困率は16.1%。日本の相対的貧困率は34のOECD加盟国の6番目と高い。

 相対的貧困率は、全人口に占める生活の苦しい人の割合を示す指標。1人当たりの可処分所得を高い人から順に並べ、真ん中の人の所得額(中央値)の半分に満たない人が全人口に占める割合を表している。

 障害者は、働ける職場が限られ、賃金が低く、しかも障害年金など公的な現金給付水準が先進国の中でも低いため、必要最低限の生活が保障されていない。貧困から脱出するには、本人や家族の就労を促進しつつ、障害者支援を進める他ない。

 障害者の雇用の受け皿といえば、企業が障害者の雇用を促進する目的で設立する特例子会社がある。2013年現在380社。10年前と比べると約3倍に増加した。だが、障害者の賃金体系が親会社と同じなのは8.2%にすぎない。

 特例子会社で働く障害者の平均年収は、150万円以上300万円未満が60.3%、150万円未満が25.3%、300万円以上400万円未満が11.9%。つまり、就労の場があっても、障害者のほぼ4人に1人は貧困状態である現実は変わらない。

 また、障害者年金は、最重度の1級でも月額8万1258円。東京都の生活保護基準がおよそ13万円程度。障害の1級という最重度の障害でも、生活保護費より5万円も低く、最低限度の生活が保障されているとは決して言えない。

賛否が分かれるベーシック・インカム

 障害者の貧困対策に妙案はないのか? 最低限の生活を保障するベーシック・インカムがあるが、制度の運用の面で賛否が分かれる。生活保護を受給している障害者も多いが、2万円程度の加算があるにすぎない。

 しかも、障害者支援の現場は、介護問題と同様に肉体的・精神的に厳しく、賃金は低いため、常にサポートする人材が不足している。障害者本人への支援と同時に、サポーターの支援環境も改善する必要があるだろう。

 富める者ますます富み、貧しき者ますます貧する。地球サイズのグローバル経済が産み落とした金融資本主義は、経済格差や貧困格差の元凶となっている。タックス・ヘイブンヘ逃げ込む富裕層、ますます貧困の深みに喘ぐ障害者。金融資産720兆円と年収200万円。貧困格差は世界に広がっている。

 しかし、社会保障の公平性と経済の効率性は矛盾するのだろうか? 孔子の『論語・為政』に「義を見てせざるは勇なきなり」とある。相対的貧困率が高止まりしている日本こそ、世界に率先して経済格差や貧困格差に立ち向かい、先例を世界に差し示すべき時ではないだろうか?
(文=編集部)

関連記事
アクセスランキング
専門家一覧
Doctors marche