糖尿病患者は何歳まで生きられる? 少しずつ改善される糖尿病患者の平均余命
1型糖尿病患者の「平均余命」と「平均寿命」を追跡した研究がある。ある年齢の人々が何年生きられるかの期待値が「平均余命」、0歳の平均余命が「平均寿命」だ。
2015年1月、英国スコットランドのダンディー大学は、20代前半の1型糖尿病患者2万4691人を対象に平均余命を調査した。その結果、1型糖尿病患者の平均余命は、健常者より男性が11.1年、女性が12.9年も短かった。
ただし、1975年に米国で行われた調査では、1型糖尿病患者の平均余命は、健常者より27年も短かったことから、40年間でかなり改善されたのは確かだ。
なお、1型糖尿病患者の70歳生存率は、健常者では男性が76%、女性が83%に対して、1型糖尿病患者では男性が47%、女性が55%とやや低い。
平均余命の追跡研究はまだある。2015年12月30日、米国疾病予防管理センター(CDC)の研究チームは、1998~2012年の15年間にわたって、50歳以上の米国人2万人以上を追跡し、糖尿病と身体機能の障害、移動・食事・更衣・排泄・入浴などの日常生活動作(ADL)との関連を分析。その研究成果を米国糖尿病学会(ADA)の医学誌『Diabetes Care』に発表した。
この研究によると、糖尿病患者は健常者より4.6年早死している、ADLの障害は健常者より6〜7年早く進行し、1〜2年間継続している。3つ以上の身体障害をもつ割合は、健常者の男性12〜16%に対して、糖尿病の男性20〜24%と、ADLの低下や身体障害が死期を早めている。
健常者より平均余命も障害がなく過ごせる期間も短い
さらに、2016年4月14日のEASD欧州糖尿病学会誌『Diabetologia』オンライン版によれば、オーストラリアメルボル市にあるベイカーIDI心臓・糖尿病研究所のDianna Magliano氏は「成人の糖尿病患者は、健常者より平均余命が数年短く、障害がなく過ごせる期間も短い」と発言した。
Magliano氏の報告によると、1型糖尿病も2型糖尿病も、50歳の平均余命は男性が30年、女性が34年。障害なく過ごせる期間は発症後12~13年、健常者より男性が8.2年、女性が9.1年も短い。障害を伴う期間は男性が17年、女性が21年だった。
ニューヨーク市のモンテフィオーレ医療センター臨床糖尿病センターのJoel Zonszeinセンター長は「米国の糖尿病患者の3分の1は発症に気づいていない。気づいても3分の1は治療しない。高血圧や脂質異常症を合併し、血糖降下療法でも半数以上は目標値に達しない。糖尿病治療をより早期から積極的に行わなければならない」とコメントしている。
地球上の糖尿病有病者数は4億1500万人。生活習慣病や肥満の余波は、世界を糖尿病に陥れている。糖尿病に伴う血糖値の上昇は、失明、運動障害、下肢切断などの血管合併症を招く。2040年までに6億4200万人、25歳以下の人々のおよそ3分の1が発症する恐れがある。
糖尿病患者は短命だ。だが、早期の予防処置、生活習慣の見直し、適切な血糖降下療法、食事療法、運動療法を組み合わせて症状を改善すれば、合併症を予防できる。「死に至る病」を避けられ、健常者と変わらない寿命を全うできる。1型糖尿病と健常者の寿命の差は縮まっている。糖尿病発症の機序を解明するさらなる臨床研究が急がれる。
(文=編集部)