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【連載「眼病平癒のエビデンス」第12回】

白内障の手術が簡単だとは限らない! コミュニケーション不足で術後のトラブルが増えている 

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白内障の手術は簡単?(shutterstock.com)

 「白内障の手術は痛くないし、短時間で簡単に終わり、良く見えるようになるのですよね?」「5分で終わるのですよね?」「1.5の視力が出るのですよね?」――。白内障の手術を希望して来院された患者さんから、このような質問をされることがあります。

 20~30年前の白内障手術は、麻酔の注射は痛いし、手術時間も長くかかっていました。それに比べて近年は、手術機器や手技の進歩により、麻酔は注射ではなく点眼で行うことが多くなり、手術時間も短縮されています。

 しかし、白内障の程度や目の状態によっては痛みを感じることもあり、手術時間が長引くことも決して少なくはありません。簡単だと思って手術を受けたのに、ぜんぜん期待どおりではなかったと不満を感じている方もいるでしょう。では、なぜ期待どおりではなかったのでしょうか?

 手術前にいろいろと情報を集めたり、友だちから経験談を聞いたりしている方も多いと思います。しかし、最も重要なことは、自分の目と他人の目は違うということです。他人の話は、あくまでその人の経験談であり、自分の目に当てはまることもあれば、当てはまらないこともあるのです。

 痛みや手術時間に関しては、進行した白内障であったり、小瞳孔や浅前房などの難しい手術の場合は、痛い注射で麻酔をするケースもあり、手術時間が長くなることが予想されます。さらに、どんな手術にも合併症があるので、手術中にそれが起こると、当然その対応に時間を要することになります。

裸眼で遠くを見えたら快適だとは限らない

 また、手術後の不満の一つに、視力の問題があります。患者さんからは「友だちは裸眼視力(メガネをかけない視力)が1.0なのに、自分はメガネをかけないと見えない」「近くが見えない。遠くも近くもメガネなしで見えると思った」「もっと視力が出ると思った」といった不満の声をよく聞きます。

 白内障の手術は、濁った水晶体の中身(皮質・核)を取り除き、残った袋(嚢)に眼内レンズを入れる手術です。この眼内レンズの度数(屈折力の強さ)により、手術後の近視・遠視・乱視の程度が決まってきます。手術前の検査によって、手術後の近視・遠視・乱視をどの程度にし、そのために必要な眼内レンズの度数を決定します。つまり、眼内レンズの度数を調整することで、裸眼で遠くが見えるようにもできるし、裸眼で読書ができるようにもなるのです。 

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 しかし、すべての人が裸眼で遠くを見えたら快適だとは限りません。例えば……。

手術前:強度の近視で厚いメガネをかけて遠くを見ていたが、近くは裸眼でも見えた。
手術後:手術前と同程度か少し軽い近視なら、遠くはメガネ、近くは裸眼でも見える。しかし、手術後に近視をなくすと、遠くは裸眼、近くは老眼鏡が必要になる。

手術前:遠くは裸眼でも見えたが、近くは老眼鏡が必要だった。
手術後:手術前と同程度の近視なら、遠くは裸眼で近くは老眼鏡で見える。近くを裸眼で見えるようにすると、遠くはメガネが必要になる。

 このように、手術後に近視・遠視・乱視の程度を大きく変えると、メガネの使い方が今までと違ってきて、慣れるのに時間を要したり、不便さを感じたりする方もいます。子供の頃からメガネをかけていた方は、手術後も遠くはメガネをかけるようにしたほうが不満を感じることは少ないようです。

 また、手術後の裸眼視力の数字(例えば1.0など)を指定する方がいますが、現在の検査の精度には限界があり、必ずしも期待どおり、予想どおりにはいかないこともあります。多少の幅を持って考えていたほうが期待外れにならないと思います。

高橋現一郎(たかはし・げんいちろう)

くにたち駅前眼科クリニック院長。1986年、東京慈恵会医科大学卒業。98年、東京慈恵会医科大学眼科学教室講師、2002年、Discoveries in sight laboratory, Devers eye institute(米国)留学、2006年、東京慈恵会医科大学附属青戸病院眼科診療部長、東京慈恵会医科大学眼科学講座准教授、2012年より東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科診療部長。2019年4月より現職。
日本眼科学会専門医・指導医、東京緑内障セミナー幹事、国際視野学会会員。厚労省「重篤副作用疾患別対応マニュアル作成委員会」委員、日本眼科手術学会理事、日本緑内障学会評議員、日本神経眼科学会評議員などを歴任。

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