少量の飲酒で顔面紅潮や頭痛などが生じるフラッシング反応(shutterstock.com)
下戸ではないが、「すぐ顔に出ちゃうんで、最初の1~2杯程度なら」と照れ笑いを交えて盃を差し出す人がいる。遠慮でないのはわかる、その1杯目で顔がもう十分真っ赤かの茹ダコ状態なのだから……。これをフラッシング反応(Flushing reaction)と呼ぶ。
このような飲酒による一時的な赤ら顔は病気ではない。しかし、下戸でも病気でもない相手だからといって「イケる口じゃないですか、さぁ、もう1杯、グググッと」なんて次から次へと酒を勧めるのは禁物だ。病気でない人の罹患率を高めてしまう可能性がある。
80歳までに「5人に1人(20%)」が喉や食道のがんに
松尾恵太郎・愛知県がんセンター研究所部長らが先日、欧州の医学誌に発表した研究報告が耳目を集めている。なんでも飲酒で即、顔を赤らめる体質の人が大量飲酒を続けると、80歳までに「5人に1人(20%)」が喉や食道のがんになる公算を突き止めたという。
松尾部長らは研究に際し、がん患者(約1300人)とがんではない人たち(約1900人)を対象に、酒の分解にかかわる遺伝子「ALDH2」の型および飲酒習慣を調べた。
この2型アルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase 2 : ALDH2)は、アルコールの代謝で生ずるアセトアルデヒドを酸化する酵素であり、人それぞれの酒に強い/弱いはこの酵素の遺伝的多型(polymorphism)に大きく依存して影響されている。
今回の分析結果によれば、下戸ではないが赤くなる遺伝子型を持つ人の場合、アルコール量にして1回46g以上(=日本酒換算で2合以上に相当)、それを5日以上摂取すると、前述のごとく、80歳までに咽頭がんや食道がんになる確率が約20%に達すると判明した。
従来からフラッシング反応を有する人のがんの可能性/危険性については報告例があるものの、その具体的確率を詳細な調査で算出した点が、今回の研究の真新しさである。
アルデヒド脱水素酵素(ALDH)には、アルデヒドが低濃度の時に働く「ALDH2」と、高濃度にならないと働かない「ALDH1」があり、日本人の約半数は生来「ALDH2」の活性が弱いか欠けている。