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【連載「国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか?」第12回】

「腰痛」で腰を反らすのはアリ? ナシ? 椎間板ヘルニアに効果がある「マッケンジーエクササイズ」

マッケンジーエクササイズは椎間板ヘルニアに効果的

 マッケンジーエクササイズの伸展運動(腰そらし運動)は、さまざまなタイプの腰痛に効果があることが報告されている。特に椎間板ヘルニアに有効だとされている。

 椎間板ヘルニアは発症すると下肢のしびれを伴う腰痛であり、これは椎間板がなんらかの原因で破損し、その中にある髄核が飛び出してそれが神経にぶつかってしまうために起こる。神経は椎間板の後方に位置しているので、髄核が後方に飛び出すことで椎間板ヘルニアの症状が起こってしまう。

 マッケンジーエクササイズは、腰を反らすことによって、椎間板の前面が広げられて椎間板内が陰圧にあり、それにより後方に飛び出している髄核が前方に戻ってくる、という理論のもとに椎間板ヘルニアに効果があるとされている。

 その方法は、とてもシンプルだ。

①うつぶせに寝て、数分安静にして全身をリラックスさせる。
②その状態から両肘を立てて、上半身を起こす(お腹は床についたまま)。
③5分程度そのままの姿勢を維持する。
④うつぶせに戻り休憩する。
⑤再び両肘を立て、その状態からさらに肘も伸ばし、腰を反らす角度を大きくする。
⑥痛みがなければ、その状態で5分程度維持する。
⑦ゆっくりとうつぶせに戻る。

 以上が、マッケンジーエクササイズの伸展運動である。これを1日に数時間おきに行うことが推奨されている。

 そのことにより、腰部の伸展方向の可動域を回復させ、自然な彎曲を取り戻す助けとなるし、上記の述べたような理由で椎間板ヘルニアにも有効だとされている(マッケンジーエクササイズは腰そらし運動だけではなく、曲げる運動もあるのだが、今回は混乱を避けるために反らす運動だけを紹介する)。

 今回はマッケンジーエクササイズの腰そらし運動を紹介した。腰を反らす運動というのは、医学的にも根拠があるが、大事なことは「適切な運動を選択する」ということを忘れないでほしい。やみくもに行うのではなく、自分の症状に当てはまる場合に行うのが理想だ。

 そのためにまずは医療機関にて、医師や理学療法士に診てもらい、正しいエクササイズを処方してもらうことが必要である。運動も薬と同じで、適切なものを処方するのが何よりも大事なことである。


連載「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか?」のバックナンバー

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

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