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【連載「病理医があかす、知っておきたい“医療のウラ側”」第4回】

垢はカラダを守る膜!? 時代が違えば常識も変わる、中世ヨーロッパの“不浄時代”

 1872(明治5)年12月16日、岩倉具視をはじめとする明治維新の士からなる岩倉使節団が目にしたパリは、舗装されたシャンゼリゼ通りの両側に聳える白亜の建造物などの「名都の風景」であった。しかし、このころ裏通りはまだゴミであふれていたはずである。事実、1873年と83年には腸チフスが流行している。

 1862年、幕府遣欧使節の一人が「殊にアンゲネーム(快適)なるは厠に御座候」と記したのは、ここパリの水洗便所であった。これはまさに、歴史の皮肉といってよいかもしれない。

 江戸時代に世界に先駆けて上水道(神田上水)を整え、共同浴場をもち、共同便所と屎尿の汲み取り・肥料としての再利用といったシステムを完成させていた江戸の街からの使者が見習おうとしたものは、いったい何だったのか。少なくとも、伝統的に風呂好きの日本人が世界に誇れる衛生観念をもっていたことだけは間違いない。

参考文献:ロジェ=アンリ・ゲラン著(大矢タカヤス訳)『トイレの文化史』(築摩書房)、ローレンス・ライト著(高島兵吾訳)『風呂トイレ讃歌』(晶文社)、蔵持不三也著『ペストの文化誌 ヨーロッパの民衆文化と疫病』(朝日選書)、医学のあゆみ178:196-198、1996より転載


連載「病理医があかす、知っておきたい“医療のウラ側”」バックナンバー

堤寛(つつみ・ゆたか)

つつみ病理相談所http://pathos223.com/所長。1976年、慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍。2001〜2016年、藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。2017年4月~18年3月、はるひ呼吸器病院・病理診断科病理部長。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書、電子書籍)『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス、電子書籍)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)、『患者さんに顔のみえる病理医からのメッセージ』(三恵社)『患者さんに顔のみえる病理医の独り言.メディカルエッセイ集①〜⑥』(三恵社、電子書籍)など。

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