カワイイよりも安全を!?(shutterstock.com)
今月、JIS(日本工業規格)案のL4129(子ども用衣料の安全性―子ども用衣料に附属するひもの要求事項)が制定公示される。「我が国において、子ども服に起因する重篤な事故事例は公的には報告されていない」(経済産業省のHPから)ものの、子育て中のママさんが対象と思われる過去の調査では77%が「危険を感じたことがある」と回答。主因が「ひもの引っかかり」によるものだったそうで、重篤事故の未然予防が今回の制定意図らしい。
具体的事例では、年少(出生〜7歳未満)向け衣料の頭部及び頸部の範囲に関して「ひもが付いた衣料をデザイン、製造又は供給してはならない」。同じく年少用の背面範囲では、「衣料の後部から出す又は後部で結ぶ引きひも、装着ひも及び装飾ひもがあってはならない」との厳格な安全基準が規定される。平たくいえば「カワイイよりも安全を!」の4129(ヨイフク)案だが、フードに関しては「力が加わった場合には、本体から外れるようなホック仕様なども有効に活用することが望ましい」として推奨事項(参考)に留めている。
着衣着火は高齢者の想定外
首回りのひもが公園の遊具に引っかかる、あるいは垂れた装飾ひもが自転車の車輪に絡んで転ぶ……。服選びの際の親の無自覚性こそが問われる事案にも思えるが、衣料絡みの事故自体は何も児童特有の問題とは言い切れないのではなかろうか。
例えば、料理中のコンロ火や仏壇の灯明から高齢者の衣服に着火する「着衣着火」という火災用語を御存じだろうか? 平成24年の場合、東京消防庁管内での着衣着火火災による死傷者数は85人。うち死亡者が4人、重篤が3人を数えたそうだが、すべてが65歳以上の高齢者だという事実には驚かされる。
東京都が昨秋公表したヒヤリ・ハット調査『シニア世代における衣服・履物の危険』でも60歳以上の男女3000人中261人が着衣着火の冷や汗体験や危害を回答。約6割が台所のコンロでの不測事態で、着衣着火が極めて日常的な災難である事を教えてくれる。