マインドフルネス瞑想については、この春に発刊された『マインドフル・ワーク―「瞑想の脳科学」があなたの働き方を変える』(著:デイヴィッド・ゲレス・翻訳:岩下慶一、NHK出版)が詳しい。
瞑想の歴史や、脳波の計測などによる科学的な分析と合わせて、アップルやグーグルなどのグローバルなトップ企業や著名人が、どのように「マインドフルネス瞑想」を取り入れているか、そしてどのような効果を生んでいるか、豊富な研究結果と共に紹介されている。
米国では、従業員のメンタルヘルス、精神性の向上に目を向ける企業は多い。最新科学がその効果を後押しする「マインドフルネス革命」は、その米国で流行の兆しをみせている。日本でも、その波はくるかもしれない。
マルチタスク傾向の強い人はタスク切り替えが下手?
これまで仕事のできるビジネスパーソンは、複数の作業を同時にこなす「マルチタスク」能力に優れたイメージだった。ところが、最近の研究によると、マルチタスクは生産性を損なう可能性があるなどのマイナス面が判明してきた。
英ロンドン大学精神医学学科のチームは「Eメールや電話によって気を散らされたときのビジネスパーソンのIQは低下しており、徹夜明けの数値とほぼ同等である」と発表。また別の研究では、「生産性が最大40%下がる」という結果もある。
そして、マルチタスクを行っているときの脳は、全ての活動を同時に処理しているわけではなく、ひとつのタスクから別のタスクに素早く切り替えている。つまり、「スイッチタスク」しているというのだ。
さらに、マルチタスク傾向の強い人は、ひとつのタスクに集中する人と比較して、関連する情報の取捨選択が苦手なうえ、タスクの切り替えが下手なことも指摘されているようだ。
デジタルデバイスの進化によって、常に膨大な情報にさらされている私たちの脳。その許容量を越えつつある今日、ひとつのことに意識を集中する「マインドフルネス瞑想」が評価されているのは、その反動だろうか。
(文=編集部)