オーストラリアの科学者は、イリエワニは、脅威を察知するために片方の目を開けたまま眠ることができることが分かったと、2015年10月23日述べています。追加の研究によって、脳の半分だけを眠らせる能力を持っていることが明らかになる可能性が高いといいます。
海の哺乳動物は、生まれてから死ぬまで、海水は飲みません。彼らは、餌の魚類に含まれている水分や代謝水の水を再利用して生命を維持しています。また、イルカのように、数秒程度の半球睡眠(大脳半球ずつ交互に眠ること)を繰り返して取るため、絶眠(寝ないで)して泳ぎ続けることが可能なような進化をしています。
さらに、冬眠する動物は、数ヶ月間、絶水、絶食できます。渡り鳥は、数日間、絶水、絶食、絶眠して大陸を移動します。ニュージランドに棲息しているムカシトカゲは、1週間以上も絶水、絶食、絶眠して餌の昆虫のハエなどが飛んで来るのをひたすら待っています。クマムシのように、数十年も絶水、絶食、絶眠して生き続けることのできる動物もいます。
生物にはさまざまな環境に適用するための生理的なスイッチが存在します。
だとすれば人間はどうか? さまざまな文化に見られる断食や絶食の文化は何のためにあるのか? 次回はこのことを解説してみます。
関邦博(せき・くにひろ)
ボリビアの不老長寿研究所教授、元神奈川大学理学部教授
専門分野、環境生理学、高圧生理学、生理人類学、潜水学。1944(昭和19)年香川県生まれ。1967(昭和42)年神奈川大学卒業。1972(昭和47)年フランス、エックス・マルセイユ大学理学部卒業。1976(昭和51)年同大学院修了、理学博士。1976(昭和51)年科学技術庁所管の海洋科学技術センター研究副主幹、調査役。1996(平成8)年神奈川大学理学部生物科学科教授。1991(平成3)年国際水中科学技術アカデミーから水中のノーベル賞と呼ばれる第33「トライデント金賞」を東洋人として初めて受賞。
ボリビアに移り住み、独自の手法で自らの末期がんと糖尿病を克服した経験を持つ。