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「9日間飲まず食わず眠らず」の修行を達成した住職!人間の身体の限界とは?

 一方、人間の基礎代謝量は体重のキログラム値の25〜30倍、すなわち、体重60kgの男性なら1500~1800kcalです。人間は日々の活動のエネルギー源として、肝臓と筋肉にグリコーゲン(ブドウ糖)を蓄えていますが、これは絶食後、約半日ですべて血糖(グルコース)となり全身で使い果たされます。グリコーゲンを使い果たした結果、血中のグルコースが低下すると、肝臓内の脂肪がエネルギー源に変化し血流中に流出します。飢餓状態がさらに進むと、体脂肪や皮下脂肪など肝臓以外の脂肪が血流に乗って肝臓へと運ばれ、これもまた肝臓でエネルギー源となります。

 これにより人間は、理論上は水分の補給さえあれば、絶食状態で2〜3ヶ月間は生存が可能であり、この限界を越えれば餓死に至ることになります。

 冒頭に記したように、比叡山延暦寺で行われる千日回峰行においては、9日間にわたって断食・断水・断眠をしながら、真言を唱え続ける「堂入り」と呼ばれる荒行が行われます。生還しても平均して15kgは体重が落ちるといいます。

 ユダヤ教の断食は、食べ物と水などの飲み物を完全に断ち、食べ物の匂いをかいだり、薬を飲んだり、歯を磨くことさえも禁止されています。断食は年に6回行われ、そのうち2回は男女ともに日没から次の日没まで丸一日、断食が行われます。それ以外の4回は、日の出から日没まで断食が行われ、病気や弱っていて断食が困難な女性は免除されます。

公認の断眠記録は264時間

 米国の睡眠研究者であるレヒトシャッフェンらは、1980年代から90年代にかけて、特殊な装置でラットを長期間、断眠する多数の動物実験を行いました。結果は明白、不運なラットはすべて死んでしまいました。ちなみに、このレヒトシャッフェンは睡眠ステージ(深度1〜4=レム睡眠)の脳波判定法を開発したことでも有名です。

 断眠開始直後は食事の摂取量が増えて活動量(エネルギー消費量)も増加し、見かけ上は元気に見えました。しかし、これは一時的で、断眠を続けると体重や活動性はしだいに減少して行きました。また免疫機能も徐々に低下し、微生物による感染が目立つようになりました。絶眠ラットは、全て2週間足らずで死んでしまったのです。

 死因は敗血症だったらしいのです。「らしい」と書いたのは、断眠による死の直接的な原因は確定していないためです。死亡したラットを解剖しても、臓器などに死因となる大きなダメージは見つからなかったのです。その代わり、断眠ラットでは免疫力低下のほかにも、体温低下や副腎皮質ホルモン(ストレスホルモン)が大量に分泌されるなどさまざまな変化が生じていました。これらすべてが死につながるリスクであり、また免疫力を低下させる要因でもあります。

 人間はどれくらい眠らずにいられるのでしょうか? 現在の公式記録は、アメリカの17歳の高校生ランディ・ガードナーさんが1964年に作った264時間です。これより長い断眠記録もあるようですが、ランディ青年の挑戦には睡眠研究で有名なスタンフォード大学のウィリアム・デメント教授が立ち会っており、信憑性が高いとされています。

 断眠を続けた11日間、ランディ青年の身に何が起こったか? 最初の2日間は眠気と倦怠感、4日目には自分が有名プロスポーツ選手であるという誇大妄想、6日目には幻覚、9日目には視力低下や被害妄想、最終日あたりには極度の記憶障害などが生じたが、身体面(首から下)には大きな問題が生じなかったといいます。11日間の断眠を達成した後、ランディ青年は15時間ほど爆睡した後に自然に覚醒し、精神面を含め後遺症を残さなかったそうです。

人間以外の動物は?

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