腸内フローラの働きは悪玉菌の増殖を抑えるだけではないshutterstock.com
腸内細菌は、絶えず増殖を繰り返しながら、腸内に夥しい細菌が競合し合い、複雑な生態系を形づくっている。この腸内細菌の集まりが腸内フローラ(腸内細菌叢)だ。ヒトと腸内フローラは、持ちつ持たれつの共生生活を送っている。双方が共存しているのは深いワケがある。
腸内細菌とっては、ヒトが三度三度食べてくれるため、栄養源に事欠かない。ほとんどの腸内細菌は嫌気性菌なので、酸素が希薄な腸管内は願ってもない居心地のいい快適さだ。一方のヒトは、病原菌の感染を防いでもらえる。免疫機能を強めてもらえる。消化できない食物の代謝を助けてもらえる。目に見えないが、オナカの中に棲む「小さな同居人」は、計り知れない恩恵を与えてくれる。
腸内は、乳酸菌などの善玉菌(有用菌)、大腸菌などの悪玉菌(有害菌) 、バクテロイデスや嫌気性レンサ球菌などの日和見菌が雑居し、敵味方が睨み合う呉越同舟の世界。日和見菌を味方につけて善玉菌を増やし、悪玉菌を減らせば、腸内フローラの平和は安泰だ。
だが、この共生関係が破綻すればどうだろう。例えば、ヒトの免疫力が低下すると、腸管内の腸内細菌が体内に侵入し、敗血症、大腸炎、アレルギー、感染症などを発症する恐れがある。食生活の乱れ、薬剤やアルコールの過剰摂取、ストレスや運動不足なども、腸内フローラのバランスを崩し、さまざまな病気を招く原因になる。健康を維持するためには、腸内フローラのバランスを整えることが、何より最優先なのだ。