プロゴルファーのタイガー・ウッズは、18人の愛人がいたことで「セックス依存症」という診断を受け、治療施設に入所した。だが、その基準をこれらの歴史上の人物にあてはめると、まぎれもなく彼らもセックス依存症ということになる。
しかし、彼らは「セックス依存症」とは評されない。そんな言葉も概念も当時にはなく、側室や妾が大勢いるのは、権力者としては至極当然のことだった。現在のセックス依存症の定義のひとつに、「生活が破綻するかどうか」がある。妻以外のパートナーがいても大目に見られた時代では、同時に複数の女性と関係を続けても社会生活の破綻につながらなかった。
「英雄色を好む」という言葉がある。時代によって漁色家や艶福家は、むしろプラスのイメージで使われてきた。時代と社会の状況によっては、複数の女性と関係を持つことが評価された場合すらある。
性に関する規範は、時代とともに変わる。異常と正常のラインは、その時々の道徳観念や常識に左右される、相対的なものなのかもしれない。