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【連載第5回 グローバリズムと日本の医療】

究極のダイエット「サナダムシダイエット」は、食べ放題、運動なし、手術も薬もなし!?

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ダイエット産業が隆盛するアメリカでは、いまや成人の3人に1人が肥満! shutterstock.com

 新年度を迎えると、体重計に乗りながら、いつも誓うことがある――。夏までに5キロ減量! 夏が終わるまでに、さらに5キロ減量!

 アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が発表した2011年度の統計では、20歳以上のアメリカ人のうち34.9%(7860万人)が、2歳から19歳までたと17%(1270万人)が肥満だった。

 肥満は、心臓病、脳卒中、2型糖尿病などとの関連があり、2008年の資料では、肥満の治療に要する米国の年間医療費は1470億ドルにも達している。要するに、肥満はアメリカとっては国家的な大問題なのだ。

 肥満の定義は日本とアメリカで異なるが、両国とも肥満と判定されるのは身長と体重から計算されるBMI(Body Mass Index:肥満指数)によって表される。その計算式と、日本(日本肥満学会)とアメリカの肥満の指数は、以下のとおりである。

BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m)

●日本
低体重(やせ):〜18.5
普通体重   :18.5〜25
肥満(1度)  :25〜30
肥満(2度)  :30〜35
肥満(3度)  :35〜40
肥満(4度)  :40〜
出典:http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/himan/about.html

●アメリカ
健康(Healthy) :18.5~24.9
太りぎみ(Overweight):25.0~29.9
肥満(Obese) :30~
出典:http://www.hsph.harvard.edu/obesity-prevention-source/obesity-definition/

 つまり、日本で肥満(2度)以上の人がアメリカでは肥満と呼ばれているのです。

世界のダイエット市場は6700億ドル

 肥満大国のアメリカではダイエットは一大産業であり、2013年、その市場規模は605億ドルでした。もちろんダイエットは、アメリカだけでなく世界でも人気があり、ある調査会社の試算によると、2015年までに世界のダイエット市場は6700億ドルに達するとのことです。

 食事療法、エアロビクス、ジョギング、ブートキャンプなど、ダイエット方法には枚挙に暇がないほど存在しますが、理屈は簡単です。必要なカロリーより摂取カロリーを少なくすればいいだけなのです。

 1日に必要なカロリーは、成人男性で1500キロカロリー程度、成人女性で1200キロカロリー程度と言われています。しかし、実行は難しいものです。食べたいものを我慢し、身体に鞭打って運動しなければなりません。

禁断のダイエット方法とは!?

 ところが、「食べ放題、運動なし、手術も薬物もなし」という夢のようなダイエット方法が、20世紀初頭からアメリカで行われています。Tapeworm diet(条虫=サナダムシ・ダイエット)と呼ばれるもので、すでに100年以上の歴史があります。

 その方法は簡単で、サナダムシの卵を飲み込むだけです。そうすると、消化管でサナダムシが生育し、体内に入った食べ物を消費するという仕組みなのです。サナダムシは消化管で最大4〜9メートルほどにも成長し、寿命は20年ほどと言われています。著名なオペラ歌手のマリア・カラスは、1950年代半ばにサナダムシ・ダイエットにより、数か月で36キロほど減量したと噂されています(真偽は定かではありません)。

 サナダムシ・ダイエットは危険を伴うこともあり、現在、アメリカでは非合法となっています。しかし、メキシコへ行けば1500ドルから2000ドルで入手できるようです。また、インターネットなどを通じて売買もされており、危険を顧みず現在でも試している人が少なくありません。事実、あるアイオワ州の女性が、インターネットでサナダムシを購入し、ダイエットのために飲み込んだことが報道されていました。診察した医師が、アイオワ州公衆衛生省に連絡して発覚しました。

 理論的には、サナダムシ・ダイエットによって体重は減るということです。しかし、その代償は大きく、死にいたる場合もある。「必要なカロリーより摂取カロリーを少なくすればいい」――。やはりダイエットに王道なしというところでしょうか。

連載「グローバリズムと日本の医療」バックナンバー

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