腰痛は「非特異的腰痛」が約85%、「特異的腰痛」が約15%
そもそも腰痛とは何か? 腰痛は、腰部を主とした痛みや張り、下肢(脚)の痛みを伴う座骨神経痛の不快症状の総称だ。
医師の診察や画像検査(X線やMRI )で原因が特定できる腰痛を「特異的腰痛」、厳密な原因が特定できない腰痛を「非特異的腰痛」と呼ぶ。腰痛の約85%は非特異的腰痛、約15%が特異的腰痛になる。
非特異的腰痛の代表は、腰椎捻挫又は腰部挫傷と診断される椎間板障害のぎっくり腰だ。
原因が特定できる特異的腰痛には、座骨神経痛を代表とする脚の痛みや痺れが主症状の腰椎間板ヘルニア(4~5%)、腰部脊柱管狭窄症(4~5%)、骨粗鬆症に多い圧迫骨折(4%)、感染性脊椎炎やがんの脊椎転移(1%)、大動脈瘤、尿路結石などの内臓疾患(1%未満)がある(What can the history and physical examination tell us about low back pain?JAMA 268: 760-765, 1992 )。
腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板が突出あるいは脱出し、座骨神経の始発駅部分である腰の神経(神経根)が刺激されるために発症する。若年~中年層に多い。
診断は、下肢伸展挙上(かししんてんきょじょう) テストによって行う。仰向けに寝た状態で症状がある方の足の膝のうらを伸ばしたまま少しずつ上げ、座骨神経痛が強まり、上げられなくなったら陽性だ。痛みのため、体が横に傾いたままの疼痛性側弯(とうつうせいそくわん)になることがある。
腰部脊柱管狭窄症は、腰骨(腰椎)の加齢変化に伴い、腰の神経(神経根および馬尾)が圧迫されるために起きる。背筋を伸ばした姿勢は、腰の神経が強く圧迫され、神経の血液循環が悪くなるが、少し前かがみになると神経の圧迫が減る。特に歩行中に症状が悪化し、一時的に歩けなくなり、前かがみ姿勢で少し休むと再び歩きだせる間欠跛行(かんけつはこう)を伴いやすい。
腰痛の大きな原因として考えられるストレス
一方、ぎっくり腰のように厳密な原因が特定できない非特異的腰痛は、椎間板、椎間関節、仙腸関節などの腰椎の関節部分や背筋などに痛みの原因がある可能性が高い。骨のずれ(すべり)やヘルニアなどの画像上の異常所見があっても腰痛にならない場合もあれば、腰痛があっても画像所見は正常な場合もある。画像上の異常所見は必ずしも痛みを説明できない。
さらに非特異的な慢性腰痛の原因として、心理社会的要因が考えられるようになっている。その大きな原因としてストレスがあげられている。大きなストレスから自律神経の機能失調が生じ、筋緊張や血液循環の悪化とともに痛みが生じ慢性的な腰痛に陥ると考えられている。