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かつては次長課長・河本準一にバッシング~ドラマ・ケンカツで学ぶ生活保護の問題

扶養照会が容易ではない背景とは?

 扶養照会というシステムは、「生活保護の補足性」という考えに基づいて設計されている。「生活保護はその人の持つ資産、稼働能力、その他あらゆるものを活用して、それでもどうしても生活費が足りない場合にのみ支給される」というものだ。

 つまり、もし援助できる経済的余裕のある親族がいれば、生活保護より先に、親族の援助が行なわれなければならない。そこで役所は親族に「この人を扶養する意志があるかないか」を確認する書類を送るのだが、これは「必ず扶養しろ」ということではなく、断っても構わない。

 しかし、生活保護を申請しようとする人は、それ以前に親族と険悪な状態になったり、長年連絡を取っていないことが多く、親族に照会されることには相当な心理的な抵抗を伴う。

 扶養義務者である親族がDVの加害者であったり、関係性が悪い場合は扶養照会が回避されるケースもあるというが、それを役所に納得させるのは決して容易ではないだろう。

かつては次長課長・河本準一へのバッシング

 親族が生活に困窮した場合、親族はどこまで援助するべきなのかという問題は、しばしば取り沙汰される。

 2012年には、お笑い芸人の次長課長の河本準一の母親が生活保護を受給していることが発覚して、バッシングを受ける事態が発生した。この件は参議院議員の片山さつきも河本の実名を挙げて問題視し、世論を揺るがす論争に発展した。

 この当時、生活保護受給者の中には、マスコミや世間から非難されているように感じて、体調を崩した者も多かったという。

 比較的豊かだった団塊世代の高齢化が進み、これからますます問題になってくると予想されるのは、生活に困窮しているきょうだいを支援しようとして共倒れになる「きょうだいリスク」だ。

 労働市場の非正規雇用化が進み、もはや多くの日本人には親族を扶養する経済的余裕はない。それでも日本の社会保障のシステムは、社会保障よりも前にまず親族が困窮者を支えることを前提に組み立てられている。

 家族にはさまざまな形があり、それぞれの事情がある。原則として三親等以内の親族を扶養義務者として、扶養照会の問い合わせをするという制度も、再構築を検討すべき曲がり角に来ているのかもしれない。
(文=編集部)

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