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【連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」第21回】

理想的な「糖質」の摂取量は「母乳」に行きつく?日本人の平均値55~60%は摂りすぎ

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理想的な糖質摂取量は母乳?(depositphotos.com)

 これまで糖質制限にはさまざまなやり方があることを、ここでも書いてきました。

①徹底的に糖質摂取を断つという「釜池式」の断糖食

②毎食20g以下を目指す「江部式」スーパー糖質制限

③毎食最低でも20gの糖質は摂取し上限を40gにする「山田式」ロカボ

 では、長く続けるにはどれがいいのでしょう? そこで、ひとつの提案をここでさせていただきます。

離乳する頃の母乳の糖質の成分と量はどのくらい?

 母乳の栄養バランスは、母親が我が子に与える理想的なものになっているはずですよね?

 日本を含む先進国では「1歳半ぐらい」を離乳の目安としていますが、狩猟採集民では「3歳から4歳くらいまで」は授乳されます。そうすると「4歳くらいまで」は、母乳の栄養バランスで食べて行くので良いはずです。

 世界的に認められている栄養学の教科書である『Human Nutrition』の第13版の記載によると、離乳の頃の糖質量は40%です。ただし内訳を見ると、32%は乳糖、残りの8%はブドウ糖・多糖・タンパクに結合した糖鎖などとなっています。

 乳糖はブドウ糖とガラクトースが結合したものですから、32%の内の16%がブドウ糖で、16%がガラクトースです。

 ガラクトースは吸収された後に最終的に肝臓で三段階の酵素処理を受けて、1時間以上経ってからブドウ糖に変わるので、ゆっくりと血糖値を上げます。しかも乳幼児は、神経細胞の発達のときにガラクトースを材料として利用するので、その全部がブドウ糖に変わるわけではありません。

 乳糖以外の糖質の半分(4%)がブドウ糖であると仮定して考えると、4歳くらいまでに必要な糖質量は、「ブドウ糖で20%」「時間をかけてブドウ糖に変わる糖質が20%弱」ということになります。

大人が必要な糖質量と子供が必要な糖質量は違うのか?

 4歳までの糖質摂取量がカロリー比でブドウ糖20%、すぐにはブドウ糖に変わりにくい糖質で20%弱ということがわかりましたから、その先を考えてみましょう。

 子供の糖質制限に猛烈に反対する方々の理屈に「子供の脳の発達のためには糖質が欠かせないからだ」という意見があります。そういう方々から「具体的に脳のどの辺の成長に何歳くらいまでたくさんの糖質が必要なのか」という話は聞いたことがないので、調べてみました。

 説明が長くなるので詳細は別の記事で書きますが、現代人は20歳くらいまでは脳、特に前頭葉の一部の発達が続くので、そのためにブドウ糖を確保することが重要だという理屈は理解しました。4歳から20歳まではある程度の糖質を摂取する方が安心です。

 それでも、4歳までの脳の発達のほうが、4歳以降よりもより多くの糖質を要求すると推定できますから、40%未満の糖質摂取量で充分なはずです。しかも半分の20%弱はガラクトースなどすぐにブドウ糖に変わらないような糖質でよいはず。

 そして大人になれば、脳の発達ではなくて脳の機能維持だけで充分です。最大に見積もっても4歳時の母乳の糖質量以下でぜんぜん問題ないはずです。

吉田尚弘(よしだ・ひさひろ)

神戸市垂水区 名谷病院 内科勤務。1987年 産業医科大学卒業、熊本大学産婦人科に入局、産婦人科専門医取得後、基礎医学研究に転身。京都大学医学研究科助手、岐阜大学医学研究科助教授後、2004年より理化学研究所RCAIチームリーダーとして疾患モデルマウスの開発と解析に取り組む。その成果としての<アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子の解明>は有名。
その傍らで2012年より生活習慣病と糖質制限について興味を持ち、実践記をブログ「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」を公開、ドクターカルピンチョの名前で知られる。2016年4月より内科臨床医。

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