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【インタビュー「訪問看護ステーション」後編:Recovery International株式会社代表・大河原峻さん】

離島での事業継続と都市型のドミナント戦略の共存で急成長の訪問看護ST

訪問看護のニーズのない地域は無い

 その大河原氏に成長し続けるRecovery Internationalの今後の展望について話を聞いた。

 「訪問看護をベースに、在宅診療、在宅ケアを大事にしていきたい、全国47都道府県やれるような仕組みづくりをしていきたい」と夢を語った上で、「過疎地域に対しても訪問できるような形にするので、大都市圏には、ある程度、ドミナント経営をして利益を作りながら、その利益で今後も看護師さんの『地元でステーションを開きたい』という夢を実現していきたいと思っています。それが看護師さんのやりがいにも繋がると思うんです」とのこと。

 大河原氏は「当社は今のシステムでやれば、訪問看護の運営で苦戦する地域はないと思っています」とこの5年で構築した自社の仕組みにも自信を見せる。そして「出店地域に関わらず、今の弊社の仕組みであれば、ある程度の収益は見込め、法改正にも対応できます」と述べる。そして、新宿という激戦区での経験が大きな自信になっていることも明かした。

 「新宿で訪問看護をやらせてもらい2年経った頃、年間の訪問件数が区で最も多いステーションになった、という話を聞きました。弊社は24時間365日対応。訪問看護の依頼はできるかぎりお断りせず、緊急対応も機動力を大切にしています。土日祝、いざという時には早朝・夜間にも訪問してほしいという患者様の需要に手応えを感じました」

利用者増の背景にルート営業のこだわりも

 利用者が増える背景には、各地域でのケアマネージャーの存在も大きい。

 「いちばん多いのは、居宅からのルートですね。つまり、ケアマネですね。ルート営業でずっとステーションの空き情報を伝えていますから」と利用者増加のノウハウも明かす。「当社は、看護師さんが営業に行っているんです。営業マンは1人も雇わないのが、当社の方針なんです。営業マンを使わずに、普段から現場を回っている看護師さんが、居宅にあいさつに行く。そこで仕事が取れるんです」

 さらに「多くのステーションが看護師さんに営業活動をさせようとして、うまくいかないことがあるようです。弊社ではケアマネさんの挨拶まわりには、先輩看護師さんや私自身が同行するケースもあります。そうすると『これも自分たちの仕事』と思い、自分ごと化してくれるようになるんです」と大河原氏。つまり、営業活動を通じて、看護師の側も利用者の増加にやりがいを感じるようになっていくという。

 また大河原氏は、精神疾患の患者へのメンタル面の看護を行う、精神訪問看護の事業にも今後は前向きだ。その理由を以下のように指摘する

 「精神の訪問看護は今後、絶対的に数は増えると思います。病院の数が減っていますし、入院できるところが少ないので、ご自宅に帰ってくる患者さんも多いんです。精神をメインでやっているステーションも増えていますが、弊社のように身体と併用して看られるステーシンは数が少なく、需要があると見込んでいるためです」

これからますます重要になる訪問看護事業

 大河原氏は「基本的には訪問看護は在宅で過ごすための医療的サポート。家で生活しづらくなった方には看護師の目線は大きい」と話す。

 そして「今、予防の重要性が言われる中で、いちばん大切なことは何か? やはり血圧を測ったり、ちゃんと薬を飲むところが大事。これが皆さん、なかなかできていない」と指摘。

 しかし「週に1回30分間看護師が来るだけで、意識が変わるんです。体調のちょっとした変化、薬の飲み合わせのことなど、お医者さんに相談するには気が引ける…でも、皆さんどこに相談していいか分からない。訪問看護師は、そんな人たちにきちんとアドバイスをすることはできます。これからは自費サービスも含め、そのニーズはますます大きくなっていくと思います」と今後の訪問看護の可能性について言及する。

 医者や看護師を確保しにくい離島での訪問看護事業も含め、企業としての利益確保と社会貢献への強い意志を共存させている――。そんな訪問看護ステーションの存在が、これからもますます求められていくことになるだろう。同社の今後の事業展開から目が離せない。
(取材・文:名鹿祥史)


自由な発想で事業を拡大!看護師が起業した「訪問看護ステーション」の成長の秘訣の画像2

大河原峻(おおかわら・しゅん)
Recovery International株式会社 代表取締役社長。1983年、静岡県生まれ。これまで手術室、救急病棟、ICU、病棟の看護師、海外の医療ボランティアなどを経験。海外滞在時、現地の友人を通じ訪問看護に触れ、帰国し、2013年、同社を設立。

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