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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第47回】

シリアが使った化学兵器「塩素ガス」に世界中が震撼! 身近な場所でも毒ガスは発生している!

筆者が経験した塩素による事故と自殺企図

 数年前に50歳代の女性が、工場で漂白剤である次亜塩素酸ナトリウムと塩酸を含む洗浄剤を混ぜて作業していた。10分後に、頭痛、嘔気、咽頭痛を訴えたため、ただちに同僚が救急車を要請し、30分後には病院に搬送された。頻脈と呼吸苦を訴えたため、酸素吸入による治療を行い入院治療したが、幸いなことに翌日には諸症状が消失し、無事に退院となった。

 また、うつ病で精神科にて治療中の60歳代女性が、自宅で漂白剤であるキッチンハイター(成分は次亜塩素酸と水酸化ナトリウム)を150ml飲んで自殺企図した。嘔吐、咽頭痛、胸痛、動悸などを訴え、1時間後に病院に救急搬送された。

 搬送の直後に嘔吐し、胃内視鏡検査により食道からの出血を確認したため止血。また、胃および十二指腸の糜爛(びらん)、腐食性変化を確認。潰瘍治療薬、抗生剤、補液、酸素吸入などの治療を行った。第5病日より、肝臓機能の軽度低下と肺炎を併発したものの、次第に軽快した。幸い腎臓機能は低下しなかった。入院後うつ状態が持続したため、第15病日に精神科に転入院となった。 

 家庭内や工場、プールなどで、次亜塩素酸を含む漂白剤やカビ取り剤、塩酸を含む洗浄剤を取り扱う際には、細心の注意を払うこと、そして、発症後はできるだけ早く医療施設への搬送を心掛けるべきである。
(文=横山隆)

連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」バックナンバー

横山隆(よこやま・たかし)

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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