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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第47回】

シリアが使った化学兵器「塩素ガス」に世界中が震撼! 身近な場所でも毒ガスは発生している!

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化学兵器の「塩素ガス」は私たちの身近な場所でも発生している(depositphotos.com)

 シリアの首都ダマスカス近郊の東グータ地区などので、住民に甚大な被害をもたらした化学兵器使用疑惑――。米国の報道機関は、アサド政権によって「塩素ガス」や「サリン」が使用されたと報道した。

 米国は、被害者の臨床症状や血液・尿を検査したところ、塩素ガス中毒が一因であると認めたとのことだ。その後、米国軍は、イギリスとフランス両軍とともに、アサド政権の3か所の化学兵器関連施設をミサイル攻撃している。化学兵器禁止機関(OPCW)の調査団は、その後、被害地域に赴き、調査を開始したが、その進捗状況が明らかになることが望まれる。

 塩素ガスは、第一次世界大戦中にドイツ軍が使用した。また、アジアやアフリカなどの諸外国でも、内乱時に使用されている。今後、化学兵器の研究が進展して、より毒性の強力な塩素ガスが、戦争やテロで使用される危険性が懸念される。 
 

塩素ガス中毒の特性、臨床症状、治療法は?

 塩素は、多くの金属や有機物と反応して「塩化物」を形成する。そのため今日では、多くの化学工業で重宝されている。また、強力な殺菌作用や漂白作用を有し、プールの消毒、家庭用のカビ取り剤、漂白剤として広く用いられている。

 そのため、メッキなどを扱う工場、プールの清掃、家庭内での漂白剤やカビ取り剤を使用中に事故を起こすことがある。

 塩素は、吸入や経口摂取により、強力な粘膜刺激および腐食作用を呈する。吸入による曝露濃度が1~3ppmであれば、軽度の粘膜刺激症状で済む。しかし、30ppmになると胸痛や呼吸困難が出現し、430ppmに達すると30分程度で致死的となる。

 吸入による急性中毒では、目、鼻、喉の灼熱感、咳嗽、呼吸困難、チアノーゼ、さらに増悪すると肺炎、肺水腫を併発する。自殺企図などで経口摂取した場合では、悪心、嘔吐、食道や胃部の灼熱感、吐血、胸痛などを訴える。

 治療法は、まず新鮮な空気のもとに移動させること。できるだけ早期に医療機関に搬送して酸素吸入を行い、必要に応じて人工呼吸や補助機械呼吸による治療を開始すべきである。

 しかし現在のところ、解毒薬は存在しない。

横山隆(よこやま・たかし)

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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