アルツハイマー病患者の脳の毛細血管は健常者よりもおよそ29%も少ない
ゴースト血管のリスクはまだある。ゴースト血管の影響は脳にも及び、認知症にもつながる。ゴースト血管とアルツハイマー病の関係を研究する認知症専門の三重大学神経内科冨本秀和教授は、脳は非常に豊富な血流を必要な部位で、身体に取り込んだ酸素のおよそ2割を消費するため、毛細血管は最も重要な臓器だと強調する。
2007年に冨本教授らの研究チームが行った研究によると、アルツハイマー病患者の脳では健常者よりもおよ29%も毛細血管が減少している事実が判明。冨本教授によれば、毛細血管は、アルツハイマー病の原因物質となる「アミロイドβ」の回収路であることから、この回収路が減少し、脳にアミロイドβが蓄積しやすくなると、アルツハイマー病の進行が加速する。
脳の組織に血液が行きわたらなくなれば、認知症患者の脳に見られる病変の一つである白質病変に陥る。
2015年に愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センターの伊賀瀬道也センター長らが行った研究によると、59歳から75歳までの1400人を調査した結果、約6割の人に白質病変が見つかった。つまり、白質病変がある人は軽度認知障害のリスクが倍増し、患者の脳はゴースト血管に犯されている可能性が高い。
さらに、血管研究の世界的権威で、骨と毛細血管の関係を研究する独マックスプランク研究所のラルフ・アダムス博士によれば、ゴースト血管はカルシウム欠乏によって骨が脆くなる骨粗鬆症も招くことから、寝たきりの大きな原因になると警告している。
肌のシミ、シワ、たるみ、くすみや、冷えを招くゴースト血管の恐怖
毛細血管と肌の老化との深い関係を調べた研究もある。
肌と毛細血管の関係について20年間にわたり基礎研究を進めてきた資生堂リサーチセンターは、1万人以上の顔面をモニタリングし、2016年に頬や目じりの毛細血管を世界で初めて3Dで表す実験に成功した。
研究によれば、50代以降の顔の毛細血管の数は、10~40代と比べ4割も減少する。たとえば、目じりの毛細血管は、70代なら30代のおよそ半分になるため、シワやたるみが発生する原因になる。
加齢関連疾患の治療法を研究する慶応大学医学部の百寿総合研究センターも長寿と毛細血管の関係について調査を始めている。今後も、毛細血管と健康の関係を探求する研究や企業は増えそうだ。
さて、このような様々な疾患や肌のトラブルの引き金になるゴースト血管。予防できるのだろうか? 次回は予防対策や食生活のポイントを話そう。
(文=編集部)
*参考
●NHKスペシャル「ゴースト血管が危ない~美と長寿のカギ 毛細血管~」
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20180401
http://www.nhk.or.jp/special/kekkan/
●Yahooニュース
https://news.yahoo.co.jp/feature/933