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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第46回】

薬剤師が選択した自殺方法は降圧薬、糖尿病薬、催眠薬の同時大量服用

薬剤師が選択した自殺方法は降圧薬、糖尿病薬、催眠薬の同時大量服用の画像1

薬剤師が計画した自殺方法とは?(depositphotos.com)

 私が約10年前に経験した降圧薬、経口糖尿病薬、催眠薬を同時過量服用して、自殺を企図した薬剤師の症例について報告する。

 職場の人間関係や恋愛がうまくゆかず落ち込み、4年前より統合失調症にて某精神科で治療を受けていた35歳の現役薬剤師だった。

 ある日、勤務先病院の薬局から降圧薬であるアムロジピン(5mg錠)84錠(総量420mg)、経口糖尿病薬であるボグリボース(0.3mg錠)87錠(26.1mg)および催眠薬ゾルピデム(10mg錠)50錠(500mg)を自宅に持ち帰って同時服用した。

 病状回復後に判明した薬剤師の考えは、降圧薬を大量服用することで血圧低下を、糖尿病薬で血糖値を低下させ、催眠薬で意識レベルを低下させての安楽死願望であった。

搬送されてから3日目に横紋筋融解症に

 3つの薬剤の大量服用の4時間後に意識レベルが低下した状態にあるのを、母親が発見して救急車を要請した。病院に搬送された時に、意識混濁状態で、血圧は50/10 mmHgとかなり低下し、脈拍は103/分と増加、対光反射も鈍かった。

 腎臓機能に異常なく、1日尿量も1400mLと正常であった。後日判明した搬送時のアムロジピン血中濃度は、200.4 ng/mLだった。通常、健康人の1回服用量5mgでの4時間後の濃度は1.5程度であるから異常な高値だとわかる。

 血糖値は低下せず、肝臓機能も異常なかった。大量点滴、昇圧剤による治療によって、血圧は70~110 mmHgと上昇したが、呼吸状態が増悪したため、補助機械呼吸管理とした。

 しかし搬送されてから3日目には、本来、心臓や骨格筋、平滑筋など筋肉のなかにある酵素CPK(クレアチンフォスフォキナーゼ)やミオグロビン、腎不全で増加するクレアチニンなどの検査値が急上昇し、尿の色も赤褐色を呈した。

 検査結果から横紋筋融解症*による急性腎不全と診断し、持続血液濾過透析を開始した。

 5日目には尿量も46mLと著明に減少した。7日目に意識が回復し、呼吸状態も安定したため、機械呼吸を停止した。透析を継続施行したため、その後、33日目にようやく横紋筋融解症、急性腎不全より回復、アムロジピン血中濃度も正常化した。50日目に退院して、精神科病院に転入院した。

横山隆(よこやま・たかし)

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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