家族の全員が「幸せ」になるには?
言うまでもないが(いや、むしろ驚かれる人のほうが多いかもしれないが)、上記の算出額はあくまでも「一人当たりの必要額」だ。つまり「満足度/幸福感」を得るためには、それぞれの家族単位(人数)に応じて、より高い収入額が必要とされる。
また先の研究では、リア充の感覚や良好状態を得るために必要な収入額に関しては「地域差」があり、高所得国で暮らしながらも「①人生に対する満足度」の感覚を甘受するためには、より高い収入が問われることもあることが読み取れた。
その点に関してJebb氏は「高所得国で暮らす場合、どうしても他人との比較が基準となることが多いからではないかと考えられる」との見解を示している。
収入が沸点に到達した場合、満足感や幸福度はむしろ低下する
しかし、論文の読者が最も注視したのは、「満足度/幸福度」と「収入の上限」との関係性の部分だろう。
「収入がある沸点に到達した場合、たとえ収入がそれ以上増えたとしても、満足感や幸福度は(増すことなく)むしろ低下する」
なんと皮肉な結論だろう。
「限界効用逓減の法則」という経済学用語をご存じだろうか。身近な例に置き換えて要約すれば、1杯目のビールの味は絶品、2杯目のおかわりも美味いが1杯目の印象には叶わない、さらに3杯目ともなれば……。
つなり先の研究からわかったことは、人間の人生もどこか会社経営と似ており、各自の「損益分岐点」みたいなものがあるというわけだ。
仮に自らのプラン通りに順風満帆、「①人生に対する満足度(1000万円以上)」の年収を手にしても、さらに収入を得ようと思えば、無理が祟って「健康」を害し、「家族」との団欒が犠牲にされ、「自由」な時間も減れば、「仲間」よりも「敵」も増えるだろう。
社会福祉財団を立ち上げた、かの富豪ビル・ゲイツ氏が曰く「金持ちで得することなどはほとんどなく、自分の子どもらに大金を残したとしても、それは彼らのためにはならない」。
この記事の中盤あたりまでを読んで、提示された必要額に「あまりにも自分とは無縁、差があり過ぎて……」と青息吐息で挫けかけた、そこのあなた! ホンモノの成功者の教訓にこそ、耳を傾けてみてはいかがだろう。
(文=編集部)