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【能で楽しむ医療ドラマ主義宣言! 第9回】

『アンナチュラル』を現役女医が解説 毒物の正体は医療現場で頻用されるあの物質!

恋人を解剖した中堂の悲しみはあまりにも大きい

 ベテランの医師でも、家族の手術に立ち会うのは容易なことではありません。客観的評価はできそうでできないし、余計なことをしたくなってしまうものです。日々の外来の中でも、医療行為に感情が入るとうまくいかない、という経験はしばしばします。

 私は医学部5年生の終わりに父の脳腫瘍の摘出手術に同席しました。父の希望だったので仕方なく入ったのですが、まあ涙の止まらないこと。

 すでに1年にわたる臨床実習を経験していた私は、オペも見慣れており、脳外科の手術は綺麗なので好きでもあったのですが、身内の脳、オペ台にいるのが父であることだけで、ず~っと泣いていました。術者も患者の希望だから仕方なく私を入れてくれたのでしょうが、今考えるとよくあの状況で手術を成功させて下さったと思います。

 そう思うと、結婚を約束した恋人がご遺体で運び込まれ、冷静に解剖ができるかと考えると私はまず無理です。仕事を全うはしたものの、法律を犯してまでも事件を解決しようとしている中堂の行動に、その心の乱れが表れているのでしょうか。

 中堂が法を守り賢く振舞うミコトと協力することで、彼の混乱した部分を補いつつ何とか人道的に事件を解決できるのでしょう。

 ついに次回は最終回!なにやら、法医解剖医の感情と、法にのっとりつつ科学的な判断を行わなければならない仕事との狭間にミコトは立たされそうです……。医師も人間。さて、結末が楽しみです。

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井上留美子(いのうえ・るみこ)
松浦整形外科院長
東京生まれの東京育ち。医科大学卒業・研修後、整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。自他共に認める医療ドラマフリーク。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。
自分の健康法は笑うこと。現在、予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を開いてい。現在は二人の子育てをしながら時間を見つけては医療ドラマウォッチャーに変身し、joynet(ジョイネット)などでも多彩なコラムを執筆する。

シリーズ「本能で楽しむ医療ドラマ主義宣言!」 バックナンバー

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