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【能で楽しむ医療ドラマ主義宣言! 第9回】

『アンナチュラル』を現役女医が解説 毒物の正体は医療現場で頻用されるあの物質!

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使われた毒物は以外にもあの薬物(depositphotos.com)

 9話目の『アンナチュラル』は展開が早く、死因も二転三転して息をつく暇がありませんでしたね。毎回見ていて、突っ込みどころや心に響いてしまう言葉がポンポン浮かんできていたのですが、今回はそれどころではなく、ついていくのに必死でした(汗)!

 美容ボトックスの影響が出たか?アリを大量に食べさせられたことで胃の内容物がああなったのか? はたまた、隣の家事の一酸化炭素が反応して殺害薬物に影響が出たとか? いろいろ想定をしながら見ていましたが、最終死因は中毒死でした。

犯人はホルマリンを静脈注入して殺人を犯していた!?

 中毒を生じる可能性のある毒物は私たちの身の回りに偏在しています。洗剤、殺虫剤、農薬、薬品など広範囲に存在していて、使用用途以外、あるいは使用容量以上で生体が摂取した場合に中毒になりえます。

 毒性学の祖であるParacelsus(1493-1541)は『毒物でない物質はこの世にはなく、まさに容量が毒か薬かを区別する』と定義しています。法医学で中毒を扱う分野=法中毒学では、この無数にある薬毒物と発生した生体障害や死亡との因果関係を、解剖や薬毒物分析を通じて解明していかなければならないのです。

 そんなわけで今回は東海林の出番が沢山ありました! 死因を特定するためには優秀な臨床検査技師の存在が不可欠です。2人の法医解剖医が1つの事実を違う側面から分析し、臨床検査技師がそれぞれに結果を出す!まさにエキスパートが力を合わせて一つの問題を解明していく気持ちよさ満開でした。

 今回登場したホルムアルデヒドという物質は、医療現場でも頻用されています。揮発性があり独特の刺激臭があります。目にも染みるので解剖実習の時などは保護の眼鏡を付けたりもしていました。

 ホルムアルデヒドの水溶液はホルマリンと呼ばれ、臓器保存のために特に手術室や外来にはたくさんあります。扱う時はできる限り手袋をしますし,気を遣う薬物です。「ギャー、手に飛んじゃった~」なんてこともありましたが、即流水で流して事なきを得る、こともありました。

 一般的にも防腐剤、塗料、接着剤などにも使われていて、いわゆるシックハウス症候群の原因の一つ、ということは有名でしょうか。

 大量に経口摂取すると腹痛、嘔吐などの胃腸障害が急激に起こり、昏睡、循環不全により死亡に至ります。今回は頭皮の静脈に点滴で注入されたとのことでした。静脈内注入が最も少量で致死に至る投与方法です。

 頭皮の静脈に点滴って打てるのかしら?今回のこの犯人は、静脈確保がとても上手なのでしょう。

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