検査の負担が少なく高精度に乳がんを検出する「乳房専用PET装置」
2016年に乳がんで死亡した日本人女性は1万4015人。乳がんは、30~64歳の死亡原因のトップを占め、35年前より3倍以上の増加傾向が続いている(厚生労働省人口動態統計:2017年9月15日発表)。
だが、バストに不満があり、乳がんセルフチェックをしない女性が少なくない。どうすればいいのか? 乳がんセルフチェックの心理的なストレスを和らげつつ、検査の物理的なバリアを低くするのが得策だろう。
検査の分野でも新しい動きがある。島津製作所が開発した乳房専用PET(陽電子放射断層撮影)装置「Elmammo Avant Class(エルマンモ・アヴァン・クラス)」だ。島津製作所のプレスリリースによれば、乳房専用PETは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による委託業務の成果に基づいて、約40年にわたるPET技術を集約し、2014年に製品化された乳房専用PET装置「Elmammo」の後継機だ。その特徴は――。
第1に、被検者は装置の上でうつ伏せになり、検出器ホールに片側ずつ乳房を入れるだけで検査を受けられる。マンモグラフィ検査のような乳房の圧迫による痛みはなく、しかも全身PET装置では取得が難しい診断情報も得られる大きな利点がある。
第2に、「Elmammo」の特長である高感度と全身PET装置の約2倍の解像度を受け継いでいるため、検診精度の信頼性が高い。
第3に、寝台上面と検出器間の距離を可能な限り短縮したことから、胸壁部分に生じやすいブラインドエリアが縮小され、寝台の形状変更によってさらに快適に受診できる。
第4に、日本人女性に多い高濃度乳房の検査にも有効であるため、抗がん剤による治療効果の判定に利用できる。
第5に、過去に蓄積された多くの臨床例を再検証し、検出器の構造の最適化を図っているので、導入コストが低減されている。
ただ、エルマンモ・アヴァン・クラスによる乳房専用PET(陽電子放射断層撮影)は、同じ検査日に全身PET検査を併せて行った場合に限って、健康保険が適用される。
乳がんのリスクのセルフチェック
このような検査の分野で新しい可能性が広がり、乳がんのリスクが低くなるのは有難い。誰でも乳がんにかかるリスクがある。乳がんの早期発見・早期診断・早期治療の大切さを伝える活動を続けている「ピンクリボンフェスティバル」よると、以下の項目に当てはまる女性に注意を促している(http://www.pinkribbonfestival.jp/about/)。
□40歳以上
□初潮が早く(11歳以下)、閉経が遅い(55歳以上)
□初産が30歳以上
□出産経験がない
□閉経後の肥満がある
□乳腺疾患(乳腺症など)にかかったことがある
□家族(祖母・母・姉妹)に乳がんや卵巣がんにかかった人がいる
少しでも「乳がんかなと?」思ったら、必ず乳腺外来の専門医を訪ねてほしい。
(文=編集部)
●参考
▶︎日本乳癌学会乳腺専門医
▶︎日本乳がん検診精度管理中央機構