免疫細胞のゲノム研究成功の鍵はデータの絶対量
しかし、決して、この分野の重要性を否定しているわけではない。これまでにもがんのゲノム研究はひと段落で、次の研究分野としての免疫細胞のゲノム研究(免疫ゲノム学)の大切さを指摘してきた。この腸内細菌研究は、免疫ゲノムを含め、多くの免疫学的指標を組み入れたデータと比較参照していかない限り、得られる有用情報が限られてくると思う。
わずか30年前でさえ、われわれは、人のゲノムを完全に解き明かすことは、先の見えない道をトボトボと歩いていくような果てしない事業だと思っていた。今や、ゲノムをシークエンスすることは、日常の医療に取り込まれるようになった。
次の10年は、われわれの体に起こっている腸内細菌や免疫系の変動・変化を詳細に調べて、がんやアレルギー疾患などの多くの疾患の詳細な病因を明らかにしていくことだと私は確信している。
個別の研究を束ねても、絶対にこの道は開拓できない。データの絶対量がカギを握る。日本がこの分野にコミットすることを願って止まない。政治はトップダウンで世界に存在感を示すようになったが、科学分野ではトップダウンが失われ、存在感・競争力が急速に低下している。
<編集部注>
※DNAシークエンサー~DNAの塩基配列を自動的に読み取り、解析する装置。
※HLA~ヒト白血球抗原。組織適合性抗原として働いている。
「中村祐輔のシカゴ便り(2017-10-31)」より転載