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【 シリーズ「中村祐輔のシカゴ便り」第21回】

腸内細菌とがん発症リスクは解明されるか?重要度を増す「免疫系のゲノム研究」

免疫細胞のゲノム研究成功の鍵はデータの絶対量

 しかし、決して、この分野の重要性を否定しているわけではない。これまでにもがんのゲノム研究はひと段落で、次の研究分野としての免疫細胞のゲノム研究(免疫ゲノム学)の大切さを指摘してきた。この腸内細菌研究は、免疫ゲノムを含め、多くの免疫学的指標を組み入れたデータと比較参照していかない限り、得られる有用情報が限られてくると思う。

 わずか30年前でさえ、われわれは、人のゲノムを完全に解き明かすことは、先の見えない道をトボトボと歩いていくような果てしない事業だと思っていた。今や、ゲノムをシークエンスすることは、日常の医療に取り込まれるようになった。

 次の10年は、われわれの体に起こっている腸内細菌や免疫系の変動・変化を詳細に調べて、がんやアレルギー疾患などの多くの疾患の詳細な病因を明らかにしていくことだと私は確信している。

 個別の研究を束ねても、絶対にこの道は開拓できない。データの絶対量がカギを握る。日本がこの分野にコミットすることを願って止まない。政治はトップダウンで世界に存在感を示すようになったが、科学分野ではトップダウンが失われ、存在感・競争力が急速に低下している。

<編集部注>
※DNAシークエンサー~DNAの塩基配列を自動的に読み取り、解析する装置。
※HLA~ヒト白血球抗原。組織適合性抗原として働いている。

「中村祐輔のシカゴ便り(2017-10-31)」より転載

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中村祐輔(なかむら・ゆうすけ)

がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長。1977年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院外科ならびに関連施設での外科勤務を経て、84〜89年、ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授。89〜94年、(財)癌研究会癌研究所生化学部長。94年、東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授。95〜2011年、同研究所ヒトゲノム解析センター長。2005〜2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長(併任)。2011年、内閣官房参与内閣官房医療イノベーション推進室長、2012年4月〜2018年6月、シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長を経て、2016年10月20より現職。2018年4月 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)プログラムディレクターも務める。

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