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【インタビュー「皮膚の色が抜け落ちる『白斑』の最新治療」前編:榎並寿男医師(新宿皮フ科院長)】

マイケル・ジャクソンも悩まされた皮膚病「白斑(尋常性白斑)」は治せる時代に

根本原因はいまだにわかっていない

──白斑の起こる原因は?

 榎並:発症を引き起こす根本原因はいまだに解明されておらず、難治性の病気とされています。ただ、皮膚の色が抜け落ちるメカニズム自体はそう難しいものではありません。

 表皮(皮膚のいちばん外側の部分)の基底層に一定の割合で存在する「メラノサイト(色素細胞)」がなんらかの理由で破壊されたり、機能を失ったりして、色素メラニンを作れなくなり、その部分の皮膚が外側からは白く見えるようになるのです。

 メラニンはシミの原因として知られるために<悪者>と思われがちですが、本来、紫外線の影響から皮膚を守る役割を担っています。なお、メラノサイトの数は人種による差はなく、皮膚の色はメラノサイトから産生されるメラニンの量の違いによります。

 白斑の発症には遺伝的要因が関与していると考えられており、原因に関しては「自己免疫疾患」説が有力視されています。

 たとえば、小さな切り傷、やけど、紫外線によるダメージなど、なんらかのきっかけでメラノサイトが傷つけられたとき、免疫細胞がこれを「異物」と見なして、排除しようと攻撃することがある。それだけで済んだら問題ないのですが、免疫細胞が今度は正常なメラノサイトまで攻撃するようになってしまう……という説です。

──治療が難しい病気だと聞くのですが?

 榎並:痛みやかゆみなどの肉体的苦痛が伴うわけではありませんが、外見が損なわれるため患者さんにとっては<心の痛む>病気です。それなのに、従来はあまり有効な治療法がなく、病院へ行っても「治す方法はありません」と門前払い同然の扱いを受けることも少なくなかったと思います。

 しかし近年、白斑の治療は進歩を遂げ、かなり高い率で改善できるようになってきました。

 まず、21世紀に入ってから、紫外線を活用して色素再生を促す「光線療法」が格段に進化、多様化しています。さらに、従来は大がかりで患者さんの負担が大きいわりに効果が今一つだった「皮膚移植手術」も進化しました。

 こうした治療の発展により、当院では白斑の患者さんに「3カ月で80%の色素再生」を治療マニフェスト(公約)として掲げ、そのとおりによい結果を得ています。まずは、白斑が<治せる時代>になってきたことを知っていただきたいと思います。
(取材・文=山本太郎)


榎並寿男(えなみ・ひさお)
1947年、岡山県生まれ。名古屋市立大学医学部卒業、同大学院修了。1979年より中部地方を中心にクリニックを開く。光線療法に関する研鑽に努め、2006年に東京・市ヶ谷に国内初の白斑専門治療院「市ヶ谷皮膚科 日本白斑センター」を開設。2008年に東京・新宿に移転し「新宿皮フ科 日本白斑センター」と改称。白斑治療に関して国内屈指の実績を持つ。著書に『白斑はここまで治る』『白斑はここまで治るⅡ』(ともにアールズ出版)がある。

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