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米国で史上最悪の銃乱射事件 国内に銃は3億丁!銃によるケガの医療費は年間約3000億円!

銃規制強化か? 銃規制緩和か?

 このような悲劇に遭遇するたびに聖書の古い箴言を思い起こす。「目には目を、歯には歯を」。しかし、銃口は相手も場所も時間も選ばない。全人類に向けられている。なぜ、銃の暴走は絶えないのか?

 事件後の取り調べによれば、スティーヴン・パドック容疑者が宿泊していたホテルから23丁の銃、容疑者の自宅から19点の火器と数千発の銃弾が発見された。容疑者が使用した銃は、半自動小銃にバンプ・ストックと呼ばれる装置を付ければ、全自動連射できる銃だった。現在の米国では、全自動の銃を一般人が持つことは禁止されているが、半自動小銃の所持も、バンプ・ストックの購入も合法だ。

 事件後、規制強化派と規制緩和派の論戦が加熱している。民主党の有力政治家は銃規制強化が必要だと発言したが、共和党指導部は世論が沈静化するまで静観を決めた。トランプ大統領は「容疑者は非常に病的だ。罪を犯す可能性がある者の精神状態、メンタルの問題に取り組むべきだ」と主張した。

 「銃が人を殺すのではなく、人が人を殺すのだ」というスローガンを掲げる全米ライフル協会(NRA)は、銃乱射事件は個人の問題なので、銃規制強化に議論が進むことを避けようとしている。

 銃規制強化派は、銃購入希望者に身元調査を行ったり、精神疾患患者やドメスティック・バイオレンスの逮捕歴のある人物への銃の販売を禁止するなどの具体策を提案してきた。だが、今回の乱射事件の容疑者は、犯罪歴も精神疾患履歴もなかったので、トラブブルもなく銃を購入できた。

 さらに、銃規制強化派は、銃の数が多い州では銃に起因する死亡者数が多いというデータを挙げて、規制強化の正統性を強調している。だが、州単位ではなく地区別に着目すれば、一人当たりの銃所持率の高い地域(農村地帯)は、所持率の低い地域(都市部)よりも銃犯罪の発生率は低いため、銃の数と犯罪率は、必ずしも相関しない。

 つまり、銃規制推進派の説得力は脆弱だ。

「法を順守するアメリカ人が銃を所有する権利を侵害してはならない」

 一方、10月5日、NRAは、半自動小銃を自動小銃のように機能させるバンプ・ストックが連邦法に合致しているか否かを検討すると発表。NRAは「頭のおかしい人物の行動によって、法を順守するアメリカ人が銃を所有する権利を侵害してはならない。バンプ・ストックへの規制強化は、新たな立法措置を実施するのではなく、アルコール・たばこ・火器爆発物取締局(ATF)による規制の範囲内で行えるだろう」と主張している。

 つまりNRAは、銃規制に妥協しない米国銃所有者協会やリバタリアンのような一切の銃規制を認めない強硬派ではなく、既存法規を順守するミッションを明確に打ち出したいように見える。したがってNRAは、自動小銃が禁止されていることから、半自動小銃を自動小銃に改造することは既存法規が禁止していると解釈し、銃規制強化の議論を鎮静化させようとしている可能性もある。

 米国のある世論調査によると、8割以上の人は銃購入希望者の背景確認をすべきと答えるが、銃規制するべきか、銃を持つ権利を守るべきかを問うと、規制強化派は半数を割りかねない。

 さて、長々と両派の思惑を探った。既に米国内に3億丁もの銃がある。一旦、護身と身の安全のために銃を所持した人から銃は奪えない。だが、今回のような不測の事態に銃は役立たない。銃口をどこに向けるべきだろうか?

○参考:現代ビジネス「アメリカ「銃社会」の起源と現在~だから一筋縄では規制できない」西山隆行(成蹊大学教授)

(文=編集部)

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