1日1万5000歩で心臓疾患の発症リスクが低下
では、どのくらい歩くと良いのか?
『The International Jornal of Obesity』に掲載された論文によると、「1日に1万5000歩」という報告がある。これは、主にデクスワーク業務の人(55人)と、歩くことが多い業務の人(56人)を10年間追跡調査したもの。
その結果、当然、歩くことが多い人たちのほうが、心臓疾患の発症率が低くかった。さらに、その中でも1日1万5000歩以上を歩く人たちは、心臓疾患の発症リスクがさらに低かったと報告されている。
歩かないより、歩いたほうが健康に良いのは当たり前だが、<1日1万5000歩以上がより効果的>という結論である。
それだけ歩くことが難しい場合は、どうすればいいのか? 報告には、「7時間立っていると同程度の効果が得られる」とも述べられている。この論文の著者は「立っていると、座っているより40%も多くカロリーを消費する」とコメントしている。
コスパに優れたがん予防法
すでに、さまざまな論文で「歩くことはがんを予防する」と報告されている。
その一つ、アメリカ医師会の内科学雑誌『JAMA』に発表された報告によると、「13種類のがん」がウオーキングで予防できるという。この13種類は、食道腺がん、肺がん、腎臓がん、直腸がんなど、がんの中でもメジャーなものが多く含まれている。
この論文では、週5回以上のウオーキング(約2.3km)でその効果が得られたという。なぜ、歩くことががんを予防するのかは、はっきりと解明されていない。
だが、運動(ウオーキング)によって、インスリンの過剰な分泌を抑えられることや、活性酵素やフリーラジカルといった、がんの発生を誘発する物質の生産を抑えることができるからだというのが、最近の見解だ。
「歩くだけ」でよいのならば、コストパフォーマンスに優れたがん予防である。
このように「歩くだけ」でも、多くの効果をもたらす「運動」であることが報告されてきた。これまでも、運動は<副作用のない薬>と言われてきた。
カラダを動かす機会が減っている現代人は、その効果を学び、意識的に取り組んでみよう。まずは「歩く」だけで大丈夫。運動習慣の一歩を踏み出そう!
(文=三木貴弘)