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【シリーズ「窃盗症(クレプトマニア)という病」第1回】

窃盗症(クレプトマニア)の多くが高齢女性! やめられない「快感」の原因は「孤独」

高齢の女性が万引きに走るのは「孤独」が原因

 なぜ、高齢の女性が万引きに走るのか。斉藤氏は、そのキーワードは「孤独」だと話す。

 「それまでまったく万引きなどしたことがなかったのに、50代を過ぎて突然始まるというケースが多い。そのきっかけとして一番多いのが、パートナーとの死別や離婚なんです」

 「<寂しいから万引きをする>という深層を分析するのは、なかなか難しいことです。ただ言えるのは、そこに<失ったものを取り返す>という意味合いがある。そして、万引きで捕まることで、連絡が途絶えていた親族と触れ合う機会が生まれる――。このことをどこまで自覚しているかは分からないが、結果的に患者の孤独感は一時的に癒されます」

 万引きで捕まり、刑事手続きの過程で、初めて医療や福祉サービスにつながる人も少なくない。

 話し相手もおらず、行く場所もない孤独が、高齢女性を万引きに走らせるのだろうか……。孤独から逃れる唯一の手段が、万引きだということだとしたら、あまりにも寂しい老後の風景ではある。

 日本の高齢者を支えるコミュニティや人とのつながりが、それだけ途絶えてしまったということなのかもしれない。
(取材・文=里中高志)

斉藤章佳(さいとう・あきよし) 
大森榎本クリニック精神保健福祉部長。アジア最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」(東京都)で、精神保健福祉士・社会福祉士としてアルコール依存症を中心にギャンブル・薬物・摂食障害・性依存・虐待・DV・クレプトマニアなどのアディクション問題に携わる。大学や専門学校で早期の依存症教育にも積極的に取り組む。講演も含め、その活動は幅広くマスコミでも取り上げられている。著者に『性依存症の治療』(金剛出版.2014)、『性依存症のリアル』(金剛出版.2015)その他論文多い。

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里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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