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【連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」第23回】

新鮮な「イカ刺し」を食べた患者さんが来院! 舌に刺さったものの正体は?

どうやってオス・メスの切り身を見分けるか?

 というわけで、新鮮なメスのイカ刺しには、とりあえずご用心を! どうやってオス・メスの切り身を見分けるかって? 痛い目にあえばわかります………いや実は、オスこそ大量の精鞘をもっているので、オス・メスの見分けは難しい。

 『イカはしゃべるし、空も飛ぶ―面白いイカ学入門』には、大量の精鞘が口中に刺さってしまった釣り人の話も記されていた。

 その人は、釣り上げたイカに、舟の上で内臓もろともむしゃぶりついたのだ。きっと、よほどの通だったに違いない。その新鮮きわまりないイカは、間違いなく成熟したオスだったのだ。

寄生虫にもご用心を!

 蛇足ながら、イカに刺されるのは何も精鞘だけに限らないようだ。イカの内臓にたかる数ミリ大で白くて角(鉤)を出したり引っ込めたりしている虫を見たことがあるだろうか?

 この虫はイカやエイに寄生するサナダムシの仲間(条虫類)で、テンタクラリアと称される。寄生部位で鉤の先端を宿主体内に引っかけて寄生するので、ときにヒトの咽頭に吸着することがあるらしい。のどの奥にしっかりと吸着するため医療機関の世話になるはめとなる。

 イカに刺された経験のある方、あるいはそうした<運のいい>患者さんをご覧になった先生方は、ぜひ当方まで連絡していただきたい。

 通常、イカの精鞘も角のある虫も切除しなければならないほどしっかりと刺さるそうです。できれば、ホルマリン固定標本の一緒に送ってくだされば幸いです。くれぐれも、イカの生喰いにはご用心あれ。

連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」バックナンバー

堤寛(つつみ・ゆたか)

つつみ病理相談所http://pathos223.com/所長。1976年、慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍。2001〜2016年、藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。2017年4月~18年3月、はるひ呼吸器病院・病理診断科病理部長。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書、電子書籍)『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス、電子書籍)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)、『患者さんに顔のみえる病理医からのメッセージ』(三恵社)『患者さんに顔のみえる病理医の独り言.メディカルエッセイ集①〜⑥』(三恵社、電子書籍)など。

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