がんのある乳房から採取した母乳には化学的な違い
今回の研究では、24~38歳の女性8人から、母乳検体10件を採取した。検体のうち5件は乳がんのある乳房から採取し、5件は正常な乳房から採取した。被験者のうち2人は自分自身の「対照」として、正常な側とがんのある側のそれぞれの乳房から検体を提供した。
その結果、がんのある乳房から採取した母乳には複数の化学的差異が認められた。今回の結果が裏付けられれば、乳がんを早期に発見するだけでなく、乳がんリスクを予測する手段にもなる可能性があると、Aslebagh氏は述べている。
米ノースダコタ大学病理学准教授のKurt Zhang氏は、この結果は意外なものではないと話す。同氏は以前の研究で、乳がんの家族歴によって母乳中に産生されるタンパク質を予測できることを報告している。
「がんの発症により体液中のタンパク質の組成は変化する。例えば、われわれは乳頭吸引液(NAF)中にみられる(がんの)タンパク質バイオマーカーをいくつか特定している。残る疑問は、どのくらい早い段階でそれを特定できるかということである」と、同氏は述べている。
NAFとは乳頭を吸引して採取できる分泌液のこと。乳房内にはほんの少量の分泌物が貯留しているため、乳房を温め、マッサージを行い、乳頭を吸引することでNAFが採取できる。
多くの乳癌はこのNAFを分泌している乳管上皮細胞から発生することが知られておりNAFの中には乳がんの存在や、乳がん罹患の危険性を示す物質が含まれていることが期待されているのだ。
マンモグラフィーに超音波検査、そして加え新たに母乳や乳頭吸引液でのがんの早期発見の可能性が出てきた。
(文=編集部)