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【中村祐輔のシカゴ便り16】

リキッドバイオプシーが医療体系を激変させる~がん患者の半数が治癒可能になる時代④

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低侵襲の診断法として大きな意味を持つリキッドバイオプシー (depositphotos.com)

 今日はシカゴに来て5年目の記念日だ。いろいろな想いがあって日本を飛び出し、矢のように時間が流れた。日本にそのままいれば、定年後の生活を考え始めていたのだろうが、米国の実情を知り、日本を遠くから眺め、日本のがん医療の将来に対する不安がますます募ってきた。

 しかし、正直なところ、心の中には、「人の何倍も働き続けてきたのだから、もう、若い世代に任せて静かに過ごしたら」という私と「日本の患者さんのために、倒れるまで、なすべきことをすべきだ」という私が混在している。

 歳を取ったためか、体調のいい日は頑張ろうと思うのだが、体調の悪い日は弱気になる。そんな時には、患者さんから頂いたメールや手紙を読み返しては自分を鼓舞している。

 3月18日の大阪での講演会の際に10代のがん患者さんのお父様から、患者さんの手書きの手紙を頂いた。読み進めるうちに目が潤んできた。私の研究成果を待ち望んでいる人のために、重い荷を背負って歩き続ける責任があると改めて感じた。たとえ、それが一人であっても。

プレシジョン医療が医療費増加を抑制

 話をプレシジョン医療に移す。がん医療の質の更なる向上のためにも、医療費増加抑制のためにも、がんのプレシジョン医療体制の確立が不可欠だが、全体像を俯瞰的に考えることのできる人材が日本には少ない。

 先週の日本滞在中に、中国のiCarbonX・韓国のTheragen・米国のThermo Fisherの幹部たちと会合を持ったが、ヘルスケアからメディカルケア、そして生命保険・医療保険まで含めて幅広い議論ができた。しかし、日本人の研究者とは話がなかなかかみ合わない。自分の研究の延長戦上の議論しかできないように思えてならない。

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(メディファックス ウェブ;医療の「希望」を信じてー米国からの便り(6)より)

中村祐輔(なかむら・ゆうすけ)

がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長。1977年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院外科ならびに関連施設での外科勤務を経て、84〜89年、ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授。89〜94年、(財)癌研究会癌研究所生化学部長。94年、東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授。95〜2011年、同研究所ヒトゲノム解析センター長。2005〜2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長(併任)。2011年、内閣官房参与内閣官房医療イノベーション推進室長、2012年4月〜2018年6月、シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長を経て、2016年10月20より現職。2018年4月 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)プログラムディレクターも務める。

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