「痛いの痛いのとんでいけー」は世界中にある?
この理論は1965年に提唱されたものなので、現在では「古い理論だ」と評価する学者も少なくない。だが、いまだにさまざまなものに応用されている。
「手当てが痛みを和らげる」というもの以外にも、たとえば「湿布」もこの理論が一役買っている。湿布には、抗炎症剤が入っているものや冷却効果があるものが一般的だ。その効果によって痛みを緩和するとされている。
ところが、その効果に加えて「触れている」という刺激も、湿布が多くの人に愛用されている理由の一つかもしれないのだ。
また、一般家庭用として販売されているロングセラーの健康機器「低周波治療器」もゲートコントール理論が根拠のひとつ。低周波を流して疼痛を和らげる。医療機関では、「電気治療法」と取り入れている施設がある。電気刺激を与えることで、痛みを感じる神経線維よりも別の太い神経線維に働きかける、というわけである。
このように考察すると、痛いところを「さする」「押さえる」という行為にも、科学的な根拠が存在することがイメージできるだろう。
実際に、日本では古くから「痛いの痛いのとんでいけー」というような<魔法>の言葉がある。これはゲートコントール理論の応用だといってもいい。実は、同じような<魔法>の言葉は世界中で使われている。
英語だと、「Pain, pain go away」と言いながら痛いところをさすったりする。スペイン語やフィリピン語でも同じように触りながらささやく<ことば>が存在する。
古今東西で行われることや、古めかしくとも今まだに続いている行為は、それなりの効果が期待できるから継承されているといえる。そして、検証してみると科学的な根拠が導かれることもある。
「手当て」で痛みが和らぐというセルフメディケーションを覚えておいて損はないだろう。医学的な根拠を知った上で行えば、なおさら効き目があるかもしれない。
(文=編集部、監修=三木貴弘)