「干し柿」が太りやすいワケ
つまり、果糖をたくさん含む食材は、より太りやすいので注意が必要だ。
果物の中では、「干し柿」は果糖成分がとびきり多い(干し柿の白い粉はブドウ糖と果糖の結晶)。肥満や痛風に干し柿はよくない。
ただし、果糖はアルコールの分解を助けるため、干し柿は「酔い覚まし」には効果があるとされる。なお、生柿に含まれる糖の多くは「ショ糖(砂糖)」である。
運動前や運動中にブドウ糖を大量に摂取すると、脂肪燃焼が直ちに停止する(脂肪合成に向かう)。骨格筋は脂肪とブドウ糖をともにエネルギー源とする。
ブドウ糖の大量摂取は、インスリン分泌が刺激されるためにブドウ糖の細胞内への移入が促進される。
短距離走や運動の最初には、ブドウ糖の摂取は効果的だ。しかし、マラソンなどの持久運動やダイエット目的の有酸素運動には、脂肪の燃焼が求められる。
筋肉内に貯蓄されているグリコーゲンがエネルギー源としてまず利用されるが、まもなく貯蓄分はなくなってしまうので、よりエネルギー効率のよい脂肪燃焼が長距離走にはなくてはならないというわけ。
たとえば、7%の糖質を含む「ポカリスエット」は、そのまま飲まずに、水か氷で希釈するのが現代のスポーツ指導者の常識だそうだ。そのまま飲むと、結果的に誘発される低血糖の結果、やたらとお腹がすくだけで、持久運動にメリットが少ないからだ。
持久力を高く維持するために果糖を摂取
一方、代謝がインスリンに依存しない果糖は、脂肪燃焼を止める効果が著しく小さいので、スポーツ時の脂肪のエネルギー化(すなわち持久力)を高く維持するために、糖質の摂取を果糖に限定することが行われる多い。
高脂肪食は、骨格筋への脂肪蓄積と運動時の脂肪代謝を促進し、スタミナが増大する。これは普段の心がけの話。長距離走の最中は、ショ糖(黒砂糖やアメ)を少しずつ摂取するのがよい。ショ糖は腸内ですぐに分解されて、ブドウ糖と果糖に変わるからだ。
というわけで、運動中のエネルギー源としては、果糖+クエン酸+アルギニン(疲労物質アンモニアの産生抑制が目的)が優れていると宣伝されている。
果糖は「精液」の<栄養源>
ちなみに、精液(精漿)には果糖濃度が高い。その濃度は、血中のブドウ糖濃度よりも高い120~450mg/dLとされ、精液が<甘い>理由となっている。
膀胱の裏側に2つある精嚢腺から、果糖は分泌される。精子には、果糖の輸送体膜蛋白であるGLUT5というタンパク質が分布している。果糖は精子の重要な栄養源だ。
ついでながら、コレステロール含量の多い食材の代表は「卵黄」である。魚類の卵であるタラコやイクラも当然ながら多い。また、コレステロール含量が最も高いのは、意外にも「イナゴの佃煮」だとされている。
昆虫には、「脂肪体」と称される肝細胞と脂肪細胞の中間的性格を有する「栄養貯蔵庫」が存在する。幼虫やサナギはとくに栄養価が高い。そのために、全世界に昆虫食は広く普及している。
日本でもイナゴの佃煮の他、「ハチノコ」もよく食される。パキスタンの高級食の一つがクワガタムシ料理であることを、映画『インディ・ジョーンズ』で知った。
インドネシアでは、食材としてコオロギが大人気らしい。セミ、タガメ、シロアリ、カイコガやウジといった多様な昆虫類が、世界中で食用に供されている。
昆虫類の血糖は、哺乳類にはない二糖類(ブドウ糖2分子よりなる)のトレハロース。その濃度は400~3,000mg/dLと著しく高いが、決して糖尿病性昏睡にはならない。
トレハロースはゾウムシのつくる蜜(トレハラマンナ)の主成分であり、トルコではぜひ買いたいお土産品だ。
このトレハロースを分解する酵素、トレハラーゼはヒトの小腸粘膜や腎臓の尿細管上皮にしっかり備わっている。昆虫を食材とすることを前提に、神さまがそのように設計してくれたのだろう、きっと。
医学生時代の授業を鮮明に思い出す。お茶碗一杯のご飯と同じカロリーなのは、リンゴ、ミカンやカキ1個、ビール1杯、ウイスキーダブルで1杯といった栄養学の講義だった。
ダイエットの敵は<イナゴの佃煮>、そして、柿(とくに干し柿)というのは、ぜひ覚えておいてほしい。