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【連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第13回】

アメリカ大統領には「頭痛持ち」が多い!? トランプ氏当選で来年は国民に「頭痛持ち」が急増?

あのジョン・F・ケネディも「頭痛持ち」だった

●第34代大統領:ジョン・F・ケネディ(1917〜1963)

 ジョン・F・ケネディは1917年、マサチューセッツ州ブルックラインで生まれました。彼は、35代大統領として43歳の若さでアメリカ大統領に。キューバミサイル危機に取り組み、議会に新しい民事訴訟法を提案し、宇宙開発の進歩を促進した功績で、映画にもなっている大統領です。

 彼も片頭痛やその他の病気に苦しんでいました。私見ですが、彼はアジソン病を持っており、発汗、めまい、倦怠感など自律神経失調に付随した頭痛であった可能性もあります。

●第37代大統領:リチャード・M・ニクソン(1913〜1994)

 リチャード・M・ニクソン大統領は、東西冷戦における緊張緩和に尽力し、ベトナム戦争を終結し、中国訪問をした功績があります。一方、ウォーターゲート事件を起こしたことでも有名です。

 ニクソン大統領も頭痛があったという噂があります。「医師には頭痛がなかったことを伝えたが、頭痛は想像上のものだと思う」と語ったそうです。また、友人が、彼に片頭痛があったかどうか尋ねたが、ニクソンは「私に片頭痛はない。私(自身)が片頭痛を生み出す」と答えたといいます。

 彼は、大統領が片頭痛の診断を受けることで、国民が誤解したり、片頭痛を大統領の弱点と解釈したりする可能性があるため、診断を明らかにしなかったと思われます。

 以上、9人のアメリカ大統領のエピソードを紹介しました。現在は、片頭痛は効果的に治療することができますが、つい最近まで効果的な薬が無かったことを考えると、大部分の大統領の時代には、大変辛い頭痛の痛みであっただろうと予想できます。

 特に、頭痛発作で一時的に職務を遂行することができなかった可能性のある大統領もいたのではないでしょうか。

 このように、政治家だけでなく頭痛持ちの人は、繊細な芸術派の方、学問にすぐれた方、社会的な地位の高い方など、潜在的な脳活動の活発な方が多いのかもしれません。実際、診察していても、社会で活躍されている方が多いと思います。

 さて、次期アメリカ大統領に就任するドナルド・トランプ氏はどうか? 彼のこれまでの発言を聞くと、彼自身は大丈夫だとしても、アメリカ国民だけでなく世界中にトランプ新大統領のせいで「頭痛持ち」が増えそうな予感が……。

【参考文献】
1)Cohen, GaryL., MD; Rolak, Loren A., MD. "Jefferson's Headaches: Were They Migraines?" Headache 46:492-497, 2006.
2)Grant's Migraine. Headache 41:925-926, 2001.
3)Migraine and the Presidency. Headache 51:1431-1439, 2011.

連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」バックナンバー

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学病院遺伝子診療部・脳神経内科 臨床教授、近畿大学総合理工学研究科遺伝カウンセラー養成課程 教授。1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、
2023年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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