<正しい手洗い>で感染症対策としては90%成功
「<正しい手洗い>が実行されれば、感染症対策としては90%成功している、と言っても過言ではない。接触感染対策に手洗いは重要だが、正しい手洗いが実行されている例は少ないようだ。より広く、より多くの方が<正しい手洗い>を励行し、感染制御の一助となることを願っている」
こう述べるのは、「KRICT(北九州感染制御ティーム)」副理事長を務める、北九州市立八幡病院副院長(救命救急センター長・災害医療研修センター長)の伊藤重彦医師だ。
KRICTは、北九州市とその近郊を地盤に、医療機関だけでなく高齢者施設なども含めた地域全体の<感染対策>を実現し、地域の人々に、より安心安全な医療を提供できるように活動している。
では、<正しい手洗い>とはどのようなものだろう。米レノックス・ヒル病院のRobert Glatter氏は、FDAによる販売禁止に触れて、こう述べている。
「手洗いにおいて最も肝心なのは、時間をかけてゴシゴシ洗うという単純かつ機械的な動作です。特に細菌や汚れが溜まりやすい爪のなか、指のあいだに注意することが大切です。それは除菌剤や石鹸などを使う場合も同様で、最低20秒以上は手を擦り続けるのが賢明でしょう」
一方で、シャボン玉石けん株式会社は、病院や保育園・幼稚園・学校など各機関での手洗い講習をはじめ、正しい手洗いの知識をもって感染症対策を行えるよう、『シャボンちゃんの手洗い歌』という<手洗い動画>を作成し、普及・啓発活動に取り組んでいる。
同社のこだわりは、石けんの製法に「ケン化法」を用いている点だ。完成まで約1週間かかる製法だが、油脂に含まれるグリセリン(保湿成分)が残り、肌に負担をかけず、しっかりと手洗いをすることができるのだという。
同社の始まりは、先代社長の森田光徳氏が長年悩まされていた湿疹にある。合成洗剤をやめて石けんを使うと湿疹が消えたことから、森田氏は合成洗剤から決別し、石けんの素晴らしさを広く訴えていった。
このような背景がある同社にとって、米国における「抗菌石けん」の販売禁止は、海の向こうの話ではないのだ。乾燥の厳しいこの季節、手荒れがひどくなるという悩みを持つ人は、石けんの成分にも関心をもちつつ、<正しい手洗い>を心がけてもらいたい。
(文=編集部)