「♪ペンパイナッポーアッポーペン~」(画像はアマゾンデジタルビデオより)
You Tube ランキングで日本人初の1位に輝き、全米ビルボード総合チャート(10月19日付)で77位に入った、ピコ太郎の世界的大ブレイク曲『ペンパイナッポーアッポーペン』(以下、『PPAP』と略す)。
ここまで話題を呼ぶ以前から文字情報としては把握していたが、添付画像の独特な風貌(コスプレ?)に苦手意識が働き、実は本稿執筆まで一回も「動くピコ太郎とその話題曲」には一度も触れてこなかった。
観た結果、「どこが面白いのか?」の論議を別にすれば、ストライクでハマる人がいるのは理解できるし、PPAPの旋律と単調な歌詞が一日中頭から離れないという人もたしかにいるだろう。
ピコ太郎『PPAP』が脳内ループするのはなぜ?
そこで本題だ。ピコ太郎の登場を待つまでもなく、昔から、振り払おうとしても耳にこびりついて残響するCM音楽や、「無限ループ」の脳内蟻地獄状態を巻き起こすおバカフレーズの類いは幾例も存在した。この現象を指して「イヤーワーム」なる言葉もある。
ほかにも古今東西の「ピコ太郎現象」を表わす言葉が世界各国にあり、ドイツでは「ohrwurm」、フランスでは「Musique entetante」、イタリアでも「canzone tormentone」という呼び方が使われてきた。
また、米国の名高き作家、マーク・トウェインの1876年上梓作品のなかにも、脳内ループ曲に関する描写が出てくるというから面白い。
脳内ループの真相は解けず
が、この、ヒトの脳裏にこびついて離れない音楽の「反芻現象」、その真の原因究明となると、21世紀を迎えた現在も核心的な結論を導きだすには至っていない。
最近の米国・心理学会誌上に載った一説を要約すれば、該当曲の条件は「単純すぎず/複雑すぎない」という二律背反性を有しているようだ。要は、聴く者が思わずカラダを揺するような速さと軽快なリズム感に富み、単純な旋律構造ながらも音程の上下動が繰り返されるなど、「童謡」に多く見られる傾向をもつ作品が該当する。
しかも、シンプルな均一感で進みつつも不意打ちの如く、独特の音程が挿入されて意表をつくような楽曲が耳底にこびりつく度合いが高いという。では、ピコ太郎以前の表現者ではいったい誰の楽曲がそんな条件に合致しているかといえば、各国研究陣の調査結果でもダントツ票をはじき出しているのがレディ・ガガ作品なのだ。
とりわけ『Bad Romance』を脳内ループ曲の筆頭にあげる被験者回答が圧倒的だが、他にも『Just Dance,Pararazzi』や『Alejandro』など、英詞の内容がわからない聴き手でもタイトルの語感だけでこびりつきそうな予感を覚える作品がガガ様には多い。
「強迫性障害の人に顕著」とする説も
こうしたリピート現象の原因説としては、他にも「単純な聴き過ぎ」説や、歌詞に散りばめられた日常言語から刷り込まれる「連想鼻歌」説。あるいは執着心の強い人がハマりやすいとされ、なかでも「強迫性障害の人に顕著」とする説などがあり、聞けば同障害の治療薬を服用したら脳内反芻現象が減った人もいるそうな。
では、鼻歌として愉しんでいるうちは何ら問題はないものの、一夜漬けでものを憶えなくてはいけない時とか、人一倍の平静さが問われる場面でいきなりKYな侵入者よろしく無意味で場違いな旋律の呪縛に見舞われてしまったら、どう対処したらいいのか?
心理学系の専門家が勧めるのは「アナグラムを解く」方法だ。たとえば、「アナグラム→グアム(と)奈良」というように文字の並び替えによる一種の言葉あそびによって、こびりついた旋律から気をそらす試みだ。誰かと喋って気を紛らわすのも得策とか。