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新垣結衣&星野源・ドラマ『逃げ恥』〜「恋人のおいしいところだけ」は話題の「ポリアモリー」?

全員が合意する「ポリアモリー」という複数恋愛

 ところが最近、Web上で話題を集めつつある複数恋愛観の論議などでは、実際はカップルが激減しているのではなく、いつの時代も<ある種の層>に交際率が偏っているだけではないのか? という声も聞かれる。

 いま話題の「ポリアモリー(英:polyamory)」と呼ばれるライフ・スタイルというか、新しめの性愛思想である。

 ギリシア語の「複数(poly)」とラテン語の「愛(amor)」が合体して「複数愛」を意味するが、従来の「不倫」とも「浮気」とも違い、「二股」「三股」とも呼ばないそうだ。

 略して「ポーリー」とも呼ばれる人たちの場合、交際相手を一人だけに限定しない開放性を尊び、同時期に複数者を愛しながら、(不倫や浮気と違って)もう一方の恋人や友人や家族をも含むすべての関係者に包み隠さず、その全員が理解(合意)を示しているのが最大の特徴だ。

 ドラマ『逃げ恥』で、みくり(新垣)が漏らした「恋人のおいしいところだけがほしい」のセリフが重なって見える。

未来は一夫一婦制が時代遅れに!?

 「ポリアモリー」の対義語が、今日の欧米社会やわが国でも「社会規範」とされている「モノガミー(一夫一婦制)」。

 従来の、責任ある「非一夫一婦制(ノンモノガミー)」に代わる新たな造語「ポリアモリー」が登場したのは、1990年代初頭の米国社会からといわれ、同国内では2009年時点でも該当人口が約50万人いると予測されていた。

 「複婚(ポリガミー)」は、「一夫多妻制(ポリジニー)」や「一妻多夫制(ポリアンドリー)」も当然ながら含まれるが、そのかたちも事実婚や恋人同士あるいは結婚制度にとらわれない生き方など、さまざまだ。

 ちなみに刹那的な「夫婦交換(スワッピング)」をポリアモリーとは見做さない。

 周囲に複数相手の存在を隠さない。その性愛のかたちをすべての関係者が合意している。相手ごとの順位付けは行なわず、誠実かつ平等に愛する――。

 そんなポーリーたちの考え方/生き方を拝聴しても、「複数の性的伴侶を持ちたいだけ」「不倫の罪悪感を都合よく言い換えただけ」と嫌悪感を示す人も当然多いことだろう。

 が、自由の代償に有り体の嫉妬心や独占欲を克服し、自分にも各相手にも嘘をつかない素直な生き方を優先するポーリーの思想には、「夫婦を超える」ヒントが隠されているかもしれない。

 他者を寛容に受け入れて、自分自身の生きがたさも柔軟に変えてゆく――。

 現実のポリアモニーの思想とドラマ『逃げ恥』のストーリーと演出をシンクロさせてみるのも愉しみ方のひとつかもしれない。

 ちなみに、ポーリー相手のもう一人の相手のことを「メタモア」と呼ぶそうな。LGBT(レズビアン/ゲイ/バイセクシャル/トランスジェンダー)に加えて、覚えておきたいコトバかもしれない。
(文=編集部)

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