通常のチョコレートには、ほとんど「フラバノール」は含まれていない
では、チョコレートをどのくらい摂取すればこのような健康効果が得られるのか?
今回レビューした研究では、フラバノール群の被験者は、1日166~2110 mgのフラバノールを2週間~1年間にわたって摂取していたという。
しかし残念なことに、通常のチョコレート製品にはさほどフラバノールは含まれていない。通常の製法だと、カカオから製品を作る過程で発酵や焙煎などの処理により、「90%以上のフラバノールが失われてしまう」からだ。
カカオ含有率が70%以上と高く、苦みの強いダークチョコレートでも、フラボノールの含有率は0.1〜0.5%程度。製品によってもばらつきがある。
カカオが多いことが、必ずしもフラバノールレベルが高いことを意味するものではなく、今のところ含有量を評価する国際的な基準もない。
仮に今回の被験者と同じくらいのフラバノールをチョコレートから摂取しようとすると、単純に考えて1日数十から数百グラムのダークチョコレートを食べねばならない。ましてやカカオ含有率が低くて甘いミルクチョコレートなら、もっと大量摂取が必要だ。
そうなると当然、糖質や脂質過多によるデメリットの方がクローズアップされてしまう。
良薬口に苦し!体に良いチョコレートは食べにくい
現時点でチョコレートの至適な摂取量についてはわかっていないが、ほとんどの既存研究は、砂糖が少ないか、まったく含まれていないダークチョコレートを対象としたものであったという。研究共著者のSimin Liu氏も「今回の知見を砂糖や脂肪分の量が異なる他のチョコレート菓子に一般化すべきではない」と指摘している。
さらにある実験では、高濃度フラバノールを含むチョコレートを食べるのを拒否した被験者の割合は、80%以上にもなるという結果が出たそうだ。体に良いチョコレートは食べにくい。まさに「良薬口に苦し」である。
では、どうすればいいか?
米ルイジアナ州立大学栄養食品科学科の非常勤教授のJohn Finley氏は「カカオの効果を打ち消さないためには、無糖のカカオサプリメントを用いるか、健康によい食品にカカオを追加するとよい」とコメント。
「オートミールにスプーン2杯ほどのココアをかけたり、エクストラダークココアを利用したりすると効果的だ」と勧めている。
「高フラバノール」をうたうチョコレート製品もあるが、製造方法が特別なため、決してお安くはないようだ。アンチエイジング効果を期待するなら、今のところFinley氏のいうように、バランスの良い食事に「少しのチョコレートをプラス」という摂り方が最善ではないだろうか。
体にいいからと言って、間違っても食べ過ぎることだけは避けたい。
(文=編集部)