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【連載「国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか?」第16回】

画像診断を気にするな!背骨の変形は「顔のシワ」? 痛みと画像診断には関連性がない!?

骨の変形と痛みにはあまり関連がない

 健康な(痛みやしびれが全くない)人でも、半数以上の人に変形が認められるというのだ。このように、脊柱の変形と、実際に痛みが生じるかどうか、にはほとんど相関がない。

 ある専門家は「背骨の変形は、顔のシミや白髪のようなものだ。確かに若いときとは違うが、だからといって、健康上影響がない場合がほとんどだ」と述べている。これは言い得て妙だ。

 つまり、画像検査で「変形」が発見されたからといって、さほど心配する必要はない。「変形」という言葉も果たして適切なのか。その人の個性、固体差なのかもしれないのに。

 腰痛の研究が進んでいるオーストラリアでは、国が発行する腰痛の治療ガイドラインに「レントゲンなどの画像所見と実際の腰痛の症状は関連がない場合が多くあるため、むやみに画像検査を行うべきではない」と明記されている。

 レントゲンやMRIを無視すべき、というわけではない。しびれなどの症状がある場合、それは神経が傷ついたり圧迫されたりしている可能性が高い。

 その場合、MRIなどの画像検査は、とても効果がある。また、高齢者の圧迫骨折の診断にはとても有効だ。

 腰痛、特に若い人でしびれなどの症状がない腰痛の場合、画像検査で変形が見つかったりしても、「腰の痛み=変形」と思い込むことは、心理的な痛みや不安を増大させてしまい、いいことはない。

 画像と腰痛の関連性が低いことは、世界的な認識となりつつある。画像検査を過信した安易な診断に振り回されると、治るべき腰痛も慢性化することになるのだ。


 
連載「国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」バックナンバー

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

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