骨の変形と痛みにはあまり関連がない
健康な(痛みやしびれが全くない)人でも、半数以上の人に変形が認められるというのだ。このように、脊柱の変形と、実際に痛みが生じるかどうか、にはほとんど相関がない。
ある専門家は「背骨の変形は、顔のシミや白髪のようなものだ。確かに若いときとは違うが、だからといって、健康上影響がない場合がほとんどだ」と述べている。これは言い得て妙だ。
つまり、画像検査で「変形」が発見されたからといって、さほど心配する必要はない。「変形」という言葉も果たして適切なのか。その人の個性、固体差なのかもしれないのに。
腰痛の研究が進んでいるオーストラリアでは、国が発行する腰痛の治療ガイドラインに「レントゲンなどの画像所見と実際の腰痛の症状は関連がない場合が多くあるため、むやみに画像検査を行うべきではない」と明記されている。
レントゲンやMRIを無視すべき、というわけではない。しびれなどの症状がある場合、それは神経が傷ついたり圧迫されたりしている可能性が高い。
その場合、MRIなどの画像検査は、とても効果がある。また、高齢者の圧迫骨折の診断にはとても有効だ。
腰痛、特に若い人でしびれなどの症状がない腰痛の場合、画像検査で変形が見つかったりしても、「腰の痛み=変形」と思い込むことは、心理的な痛みや不安を増大させてしまい、いいことはない。
画像と腰痛の関連性が低いことは、世界的な認識となりつつある。画像検査を過信した安易な診断に振り回されると、治るべき腰痛も慢性化することになるのだ。