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残暑も吹き飛ぶエグい人体神秘&スプラッター映画8選 夏~秋の医学映画祭2016 

クローネンバーグならではのフェティシズム『戦慄の絆』

 『戦慄の絆』(1988年)は、デヴィッド・クローネンバーグが監督した医学映画。1975年に実際に起こったスチュワート・マーカスとシリル・マーカスという双子の産婦人科医が、診察室で死んでいたという事件をもとに構想されている。

 映画では、一卵性双生児の産婦人科の兄弟が一人の美人女優と出会った事から悲劇が始まるわけだが、この映画の見所は中世の拷問具を思わせるようなグロテスクな手術道具や真っ赤な手術着だろう。クローネンバーグならではのメディカル・フェティシズムを堪能して欲しい。

マッドサイエンティストを描いたウォーホルの『悪魔のはらわた』

 『悪魔のはらわた』(1973年)は、アンディ・ウォーホルがプロデュース作品とクレジットされているが、B級映画としてよく知られる。人気女優ダリラ・ディ・ラッツァーロが全身を縦断するほどの大きな傷跡を晒す全裸姿のシーンを記憶している人も多いだろう。

 ストーリーは主人公フランケンシュタイン博士が、性欲に飢えた妻をほっぽらかして人造人間製造に明け暮れるというお話。単なるギャグとしても観れるが、他のウォーホル映画と比較しながらシニカルなパロディとして観賞するのも楽しい。

 映画終盤、自らの作品である人造人間に内臓を突き通されて瀕死となった博士は、それでも「人生をこの研究室と夢にささげてよかったよ」「後悔しない、何一つ、おれまで最善をつくしてきたのだからな」という断末魔の言葉とともに没していく。どんなに狂ったマッドサイエンティストでも最後まで確信犯でいて欲しい。そんな善悪の彼岸を感じさせるところに伊達にウォーホルの名前を借りてないなと思わされる。

3世代の男たちが繰り広げる数奇な物語『タクシデルミア ある剥製師の遺言』

 『タクシデルミア ある剥製師の遺言』(監督:パールフィ・ジョルジ、2008年)は、ハンガリーの作家ラヨス・パルティ・ナジの短編小説を原作とし、祖父から父、その孫の若き剥製師の3世代を描いている。

 医学映画として楽しめるのは剥製師となった孫のパートだが、戦時下で上官の下僕としてこき使われる祖父、上官の妻と関係して生まれた父が巨漢で早食い競技の選手と、かなりビザールな映像が続く。

 そんな父の遺伝子を継いだのは、剥製師となった小柄な孫だった。内気な孫は、巨漢の父が猫に食われて亡くなると、ある計画を実行に移す。その最後のシーンこそが医学や人体標本に興味がある人々が最も身震いするところなのである。

人体標本と骨格標本が踊る『放課後ミッドナイターズ』

 最後は『放課後ミッドナイターズ』(監督:竹清仁、2012年)の登場だ。はっきりいって、子供向けのアニメーションだが、世界的にも評価は高く、滑らかな動き、そのスピード感には飽きさせられることがない。

 「裸ん坊」こと踊る人体標本と、カクカクとぎこちなく動き回る骨格標本、この2人が画面いっぱいに走りまわり、失敗とユーモアで笑わせてくれるのだ。

 本編には、主人公たる3人の子供たちが登場し、深夜の学校を舞台に、学校に眠る歴史的人物たちの亡霊との終わりなき戦いを続ける。遊園地にでも来たつもりでその軽快なアニメのめくるめく展開にハマってみては?


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ケロッピー前田(けろっぴー・まえだ)
1965年、東京生まれ。千葉大学工学部卒後、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランスに。世界のアンダーグラウンドカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、ハッカー、現代アート、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。著書『今を生き抜くための70年代オカルト』 (光文社新書) が話題に。近著に『CRAZY TRIP 今を生き抜くための“最果て"世界の旅』(三才ブックス)がある。

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