映画『シュガー・ブルース 家族で砂糖をやめたわけ』配給:T&Kテレフィルム、公式HP:www.sugar-blues.com (c)2014 GOLDEN DAWN
砂糖の過剰摂取による心理的・身体的な依存症を指す、「シュガー・ブルース」という言葉を聞いたことがあるだろうか。もともとは1919年に作られた曲のタイトルだったが、1970年代に出版されたウィリアム・ダフティによる同名書籍(邦題「砂糖病 甘い麻薬の正体」)がこの言葉に新たな意味を与えた。これは、砂糖(精製糖)の危険性を初めて警告した本だといわれている。
砂糖税導入は肥満リスクの抑制の救世主になるか
2015年、WHO(世界保健機関)は肥満や虫歯対策として、1日の摂取カロリーのうち砂糖を5パーセント未満に抑えるよう呼びかけるガイドラインを発表した。また、イギリス政府は砂糖の摂り過ぎによる子どもの肥満を減少させるために、2018年から100mLあたり5g以上の砂糖を含有するソフトドリンクに課税する方針を固めた。
すでにフィンランドやフランス、メキシコなどで同様の課税が行われており、メキシコではすでに過半数の消費者が砂糖入り飲料の摂取量を減らすようになったという結果が出ている。
このように、肥満や虫歯と砂糖の関係をWHOや各国政府は重視しているが、7月23日公開の映画『シュガー・ブルース 家族で砂糖をやめたわけ』では、各専門家や活動家が「砂糖摂取は、2型糖尿病や時には死に至るさまざまな病気までも引き起こす」と主張している。
本作は、アンドレア・ツルコヴァー監督自身が妊娠型糖尿病と診断されたことをきっかけに、砂糖の秘密を探るため世界8カ国を巡り、医師、研究者、政治家、啓発活動家などに取材を敢行したものである。
ここで「砂糖」と呼ばれているのは、糖蜜を分離して甘さの源のショ糖のみを精製した分蜜糖(上白糖、グラニュー糖、三温糖などの精製糖)だ。精製時には甘さを追求するためにミネラルやビタミンが除去されているという。
監督は「専門医の多くが砂糖と2型糖尿病の関係を否定している」と前置きしながらも、砂糖原因説を前面に押し出す。ニューヨーク市立大学心理学教授のリチャード・ボドナーは、「精製糖は吸収が早く血糖値を急上昇させる。その結果、膵臓からインスリンが大量に放出され血糖値が急激に低下するため、すぐにまた甘いものが欲しくなり、それが続くと2型糖尿病を招く」と説明。
実際この因果関係に関しては、2015年に「砂糖入り飲料を習慣的に摂取すると、肥満の有無に関わらず2型糖尿病発症リスクが高くなる」という英国・ケンブリッジ大学の調査 結果がBMJオンライン上で発表されている。