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なぜ大人になると時間が短く感じられるのか? ジャネの法則とは?

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あなたの時間は速い?遅い?shutterstock.com

 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし」―― 鴨長明『方丈記』

 あなたが生きているこの世界は、縦・横・高さの空間3次元 + 時間1次元の「4次元の時空間」だ。光陰矢のごとし。時間は瞬く間に流れ去る。あたかも川の流れを見るかのように、時間は過去から現在を経て、未来へ流れるように感じられる。なぜだろう?

ジャネの法則は正しいか?

 小学生の時よりも大人になった今のほうが、1年間を短く感じる。子どもの頃の1年間は、大人になった今よりも長く感じる。あなたもそうかもしれない。

 時間を長く感じるのは、どんな時だろう? かたや時間を短く感じるのは、どんな時だろう? 1日24時間、1年365日。誰にとっても物理的には同じ時間の長さなのに、時間をゆっくり長く感じたり、速く短く感じたりする。なぜだろう?

 19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネは「主観的に記憶される年月の長さは年少者にはより長く、年長者にはより短く評価される。時間の心理的な長さは年齢に反比例する」というジャネの法則を発案。たとえば、10歳の1年間は10分の1に感じられ、50歳の1年間は50分の1に感じられるため、50歳の1年間は10歳の1年間よりも5倍速く過ぎるように感じられるというのがジャネの法則だ。正しいだろうか?

時間の長さを決めるのは何?

 子供の頃は、見るもの聞くもの触れるものすべてが初体験・未経験なので、心理的な経験量と物理的な頻度の総量(体験や学習の総量)が記憶に深く刻まれ、蓄積されるために、時間がゆっくり長く流れると感じるのは確かだ。

 大人になると、心理的な経験量と物理的な頻度の総量は増大するものの、処理速度が速まり、処理量も増えるので、それが記憶に蓄積されにくいために、時間が速く短く流れると感じる。それがジャネの法則が説明する「時間の心理学的な長さ」だ。

 しかし、「時間の心理学的な長さ」は、心理的な経験量と物理的な頻度の総量だけで単純に決定できるだろうか? むしろ試行錯誤した体験や学習から得られた様々な経験の質こそが、「時間の心理学的な長さ」に深く関わっていると感じられる。

 つまり、常に大脳は古い体験や学習の上に、新しい体験や学習を上書きして記憶するので、「時間の心理学的な長さ」は「新しい体験や学習による経験の量と質の総和」によって決定されると判断できる。したがって、次の等式が成り立つ。
                 
 「時間の心理学的な長さ=時間の物理的な長さ ÷ 新しい体験や学習による経験の量と質の総和」

 分子の「時間の物理的な長さ」は年齢で変動するが、分母の「新しい体験や学習による経験の量と質の総和」が大きくなればなるほど、「時間の心理学的な長さ」は小さくなることから、時間がゆっくり長く流れると感じられる。

 ジャネの法則によれば、10歳の1年間は10分の1(0.1)に感じられるので、50歳の1年間の「時間の心理学的な長さ」を10歳の1年間の「時間の心理学的な長さ」と等しくするためには、次の等式が成り立つ。

 10歳は0.1=10/100
 50歳は0.1=50/500

 つまり、50歳の1年間の「時間の心理学的な長さ」を10歳の1年間の「時間の心理学的な長さ」と等しくするためには、「新しい体験や学習による経験の量と質の総和」を5倍に高めればよいことが分かる。

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