「再婚禁止期間を100日に縮める改正案」は国会で棚ざらしのまま!
一方、女性にだけ6カ月間の再婚禁止期間を設けている民法733条1項の規定は、憲法14条(法の下の平等)と24条(両性の平等)に違反するかについて、最高裁判所は「100日を超えて再婚禁止期間を定める規定は憲法に違反する」と認めた。裁判官13人が再婚禁止期間100日超は違憲である、2人は禁止期間そのものが違憲であるとそれぞれ意見を述べている。
民法733条1項の規定は、生まれた子どもが前婚の夫の子か後婚の夫の子かの父性紛争に巻き込まれるのを防ぐことから、憲法に違反しないと判断されてきた。だが、離婚や再婚が増え、DNA鑑定や医療技術も進化した。再婚を6カ月も制限する合理性ヘの疑問や批判も強まった。再婚禁止規定を廃止し、親子関係の合法的な整備を急ぐべきだという世論が高まるのは当然だ。
このような機運の中でも、最高裁判所は、価値観の分かれる家族法に関わる民事事件の憲法判断を抑え、国会の法改正に委ねる傾向が強い。そのため、今回のような「夫婦別姓は合憲、再婚禁止期間100日超は違憲」という及び腰の消極的な判断に停滞している。
今年3月、最高裁判決を受けた政府は、医師が妊娠していないと診断すれば、再婚禁止期間に関わらず再婚を認める「再婚禁止期間を100日に縮める改正案」を国会に提出した。2カ月以上が過ぎたが、成立の動きも兆しもない。国会の民法改正の審議はフリーズしている。「再婚禁止期間を100日に縮める改正案」は国会で棚ざらしのままだ。なぜなのか?
マスコミ各社は、再婚禁止期間の見直しは与野党に異論はないが、衆参両院の法務委員会に審議すべき法案が多く、夫婦別姓も審議したい野党と与党の綱引きが続いている。その結果、各党の様々なかけひきが強まり、審議する法案の順番や日程が変動するため、与野党間の調整が大幅に遅れていると報じている。
報道が事実なら、国会の怠慢、国会議員の責任逃れという他ない。再婚を認めるか否かの重大な民法改正だ。最高裁判所が基本的人権の侵害を判断した民法の憲法違反を速やかに正すのが唯一の立法機関、国会の使命ではないのか? 国会議員は忘れないでほしい。国家権力の恣意や暴走を断ち、法律によって国民の権利や自由を守る。それが民主主義の法治国家を支える国会議員の仕事だ。
戦後70年以上が過ぎた。ライフスタイルも、性意識も家族観も夫婦観も、個人主義に大きく舵を切っている。女性の地位や評価は改善されてきたとはいえ、公私にわたるハンディを負わされた社会的弱者である事実は否めない。夫婦別姓への切望や再婚期間短縮へのニーズは、女性の人権意識の高まりの現れでもある。
国会は、日常生活に密接な民法、とくに家族法改正に早急に取り組むべきだ。家族の紛争から子どもを守るためにも、国会は一刻も早く「再婚禁止期間を100日に縮める改正案」を成立させなければならない。「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」――。米沢藩主・上杉鷹山の警句を胸に刻んでほしい。
(文=編集部)