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熊本地震で拡散される無責任なデマ 冷静な判断力を養うために必要なことは?

噂話が拡散されていく集団内での同調心理とは?

 ただし、女性は男性に比べて周囲の友人の評価や価値観を重要視する傾向が強いので、周りの意見に左右され、付和雷同に流れやすい面もある。自分がターゲットになるリスクを避けるために、敵ではないという意思表示を態度で示し、悪口や陰口に同調する場合が多い。

 特に集団の中にいる時は、少数派の主張よりも多数派の主張が正しいと誘導されやすく、間違った意見に従う集団エゴイズムという同調心理にはまる。同僚・家族・恋人・友人などの親密な人から耳にした噂話を信じやすいため集団エゴイズムが強まり、悪評や偏見が拡散しやすい。同調快感(シンククロニシティ・コンフォート)のバランスを保とうとする意識も働いている。

 また、スリーパー効果も加わるときがある。スリーパー効果は、ゴシップ雑誌の記事、ネット上のトリビアや都市伝説など、出所不明で信憑性が危うい根も葉もない情報でも、時間の経過とともに説得力が高まる現象だ。スリーパー効果が強まると、噂話がガセネタでも事実であるかのように一人歩きして世間に広まるからタチが悪い。

 さらに、公平性の信奉という心理が働くときもある。世界は公平だから理不尽な出来事は起きないと思い込むと、他人に不幸やトラブルが起きた原因は、その人の過失や性格にあると考える心理だ。火の無いところには煙は立たないから、噂話に曝されるのはその人に問題の根があると信じ込みやすい。

 このようにして噂話は、集団エゴイズム、スリーパー効果、公平性の信奉に煽られながら、巷にばらまかれていく。

噂話に夢中になると不安やストレスが和らげられる!?

 脳科学的に見ればどうだろうか? 米国ウェーバー州立大学のスーザン・M教授(コミュニケーション学)によれば、噂話は、知らない人の情報を知り、他人と親交を深めるための重要なコミュニケーション手段になると話す。誰でも他人が何を知っているのか、どのように考えているのかを理解したいので、本人に話を聞くだけでなく、世間に溢れる雑多な情報を集めるために噂話を聞こうとするらしい。

 女性が噂話に夢中になると、大脳でどのような変化が起きているのか? 中枢神経系の神経伝達物質で快感ホルモンのドーパミンが放出されるため、妊娠を助ける女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)の濃度が急上昇し、不安やストレスが一気に緩和される。この一連の好循環によって生まれた生理的快感がますます噂話への欲求を刺激し続ける。

 つまるところ、噂話に興じるのは自己防衛そのものだ。防衛しきれないからこそ、悪意・敵意・欲求不満に煽られ、嫉妬・恐怖・不安に駆られる。嫉妬心・恐怖心・不安感から逃れようと、必死に攻撃する。スケープゴートを巧妙に仕立て上げる。自分は噂話の矢面にたたされないように、セーフティ・ゾーンに逃げ込もうとするのだ。

 今回は噂話に狂う心理をあれこれと分析してみた。人間にはこのような心理的な特性があることを意識することは、熊本地震でも繰り返されている事実無根で悪意に満ちた流言やデマに惑わされない冷静な判断力を養うことになるだろう。
(文=編集部)

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