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【連載「病理医があかす、知っておきたい“医療のウラ側”」第10回】

病院にあふれる臓器・組織はどのように処分される?~誰も知らない「医療廃棄物」の問題

大量の「焼骨」を引き取らなければ焼かない!

 わが病院から出る臓器・組織の焼却は、地元の市役所が請け負ってくれている。

 あるとき、我が病理診断室にたまった在庫を一気に整理した。問題の臓器・組織には、解剖時に採取された脊椎・胸骨、手術切除された下顎骨・肋骨などの骨組織が結構含まれているのだ。

 間の悪いことに、同じ頃、整形外科も冷凍保存されていた切断四肢をまとめて焼却処分した。その結果、普段の数倍の量の焼骨が発生してしまった……。

 困ったのは市役所から業務を下請けした業者だ。斎場としては、大量の「焼骨」を引き取らなければ焼かないという。当時、わが病院の総務課の人たちは、躍起になって交渉を重ねた。

 半年以上この廃棄物処理が滞って、解剖室の裏側が乾燥された臓器・組織の山と化しかけたころ、ようやく解決策が登場した。あるお寺と契約が成立したのだ。「焼骨」を無縁仏としてまとめて納骨するのだ。

 それ以降、病理解剖室の倉庫には、ホルマリン固定された臓器・組織を容れる容器と並んで骨壷が置かれている。

 ごみの処理にはいろいろな問題があるが、こんな「独特」の悩みを抱えているの部署が病院内にあることもぜひ知っていただきたい。


連載「病理医があかす、知っておきたい“医療のウラ側”」バックナンバー

堤寛(つつみ・ゆたか)

つつみ病理相談所http://pathos223.com/所長。1976年、慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍。2001〜2016年、藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。2017年4月~18年3月、はるひ呼吸器病院・病理診断科病理部長。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書、電子書籍)『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス、電子書籍)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)、『患者さんに顔のみえる病理医からのメッセージ』(三恵社)『患者さんに顔のみえる病理医の独り言.メディカルエッセイ集①〜⑥』(三恵社、電子書籍)など。

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