狂犬病を発病したら死亡率はほぼ100%
この病気の恐ろしいところは、ひとたび発症したら最新医療をもってしても治療方法がないこと。死亡率はほぼ100%だ。
罹患したら急性脳炎を起こし、光をまぶしがったり、水を怖がる恐水症、風を避けたがる恐風症、不安感、けいれん、麻痺などを伴う苦痛のなかで死んでいく。人間の場合はそれほど強烈でない「麻痺型」の症状もあるが、最後に死に至るのは同じだ。
こうした症状は犬も人も同じだが、日本では昭和31年を最後に、60年近く国内感染の例がなく、専門家でもまず目の当たりにする機会がない。
かの有名なホラー小説家のスティーブン・キングは、小説『クージョ(Cujo)』で、この狂犬病の恐ろしさをスリリングに描いている。原作とは一部異なるが、1983年にはアメリカで映画化もされている。
『クジョー(Cujo)』は、森の中でコウモリに咬まれて狂犬病を発症したセント・バーナードが飼い主を咬み殺し、居合わせた母子を執拗に襲うというストーリーだ。ホラーメイキングされているだけに、手に汗握るドラマティックな映像だ。
映画『黄色い老犬(Old Yeller)』(1957年・アメリカ)のほうが現実に近いかもしれない。一人の少年を通して、長年連れ添った優しい愛犬の狂犬病で変わり果てた姿に対する悲哀が、切なく描かれている。最後に少年の手で凶暴化した愛犬を射殺するシーンは、愛犬家にはたまらない悲劇だ。
人間の場合、たとえ感染しても早期に適切な暴露後予防接種を受ければ、発症と死を防ぐことができる。しかし、犬をはじめ動物たちは現状では難しい。
日本国内で悲劇を生まないためには、犬たちに狂犬病ワクチン接種を受けさせて、予防対策をすることに尽きるのだ。
(文=編集部)